ネコの系譜

先日、飼い猫の「ハナ(キジトラ♀)」が死んでしまった。
「ハナ」が生まれたのは、私がまだ中学生の頃。
当時の飼い猫「くう(黒猫♀)」と、近所の野良猫「キンタ(キジトラ♂)」の間に生まれた。
「くう」は黒光りする毛並みに黄金の双眸。
すらりとしなやかな肢体を持つ、近所でも評判の美人猫だった。
しかし、「ハナ」を生んで1年後に、クルマに轢かれてしまい、
その生涯を閉じる。
享年3歳。
「キンタ」は、堂々たる体躯にらんらんと鋭い眼光の持ち主。
非常に賢い偉丈夫で、近所の野良猫たちの大将をつとめていた。
没年不明。
その間に生まれた「ハナ」は、同じくウチの飼い猫だった「ラッキー(白と茶のブチ♂)」との間に二男三女の子供をもうけた。
「ラッキー」は「オデブ」と言われても仕方がないほどの巨漢で、
育児にも積極的に参加するような、非常に心優しい猫だった。
しかし晩年、「ネコエイズ」に罹患。
次第に体力が衰え、死亡。享年13歳。
そして、「ハナ」と「ラッキー」の子供たちは…
ぼたん(三毛猫♀)…生まれて一年と経たず、行方不明。
すみれ(三毛猫♀)…「さくら」とともに、ある日突然行方不明になる。生死不明。
さくら(三毛猫♀)…「すみれ」とともに行方不明になるが、約3ヵ月後にボロボロになって帰ってくる。
それからは平穏に暮らすが、早くに避妊手術を施したため、子孫は遺せず。
晩年、父ネコのネコエイズに感染。
数年の闘病生活の果てに死亡。享年12歳。
銀平(キジトラ♂)…ワンパクで非常に器量よしのネコ。
あまりに可愛すぎて、近所のウチに飼い取られてしまった模様。生死不明。
光平(キジトラ、腹側白の三毛猫♂)…父ネコそっくりの巨漢ネコ。
非常におっとりした性格。
早くに去勢手術を施したため、子孫は遺せず。
晩年、父ネコからのネコエイズを罹患。
数年の闘病生活ののち死亡。享年13歳。
「ハナ」自身の一生も、十分に「波乱に富んだ」と言っていいものだった。
出産後まもなく、近所のウチの庭に仕掛けてあったトラバサミに右前足を挟まれる。
瀕死の重傷を負うも、なんとか一命を取り留めて数ヶ月の入院生活ののちに生還。
ただし、右前足は治癒不可能なほど損傷激しく、切断処置となった。
その後の生涯は、短くなってしまった足に色々な不便もあったようだが、
足が一本ない以外は非常に健康で、
それどころか五体満足なネコよりも機敏であり、
スズメや虫などを狩っていた。
性格も自尊心が非常に高く、いつも凛としていた。
晩年は、同居していた夫ネコ、子供ネコなどが次々死んでゆくのを見届けながらもしっかりと生きる。
そして、今年。
平成17年8月31日。
2日間の危篤状態ののち、
掃き出し窓からの風が心地よい部屋の片隅で、
眠るようにその生涯を閉じた。
享年15歳。
「ハナ」は、我が家がまだ仙台の街中にあった頃からの飼い猫で、
その「一族」最後の生き残りでした。
私の生涯の半分。
いつも視界の端にいた存在ですから、いなくなってしまったというのはとても寂しいことです。
だから、
「ハナ」の死にあたって、
こういうネコの一族がいたと、
系譜という名の記憶を遺しておこうと思った。
長い間、ありがとう。
の意味をこめて。
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コメント
ハナちゃん、見事な最期でした・・・・
ハナちゃんといえば、ほとんど一回転していた「カギしっぽ」を高々とあげて歩き、テレビの線なんかにしっぽを引っかけちゃって「んにゃ~~!んにゃ~~~!!!(誰か~取ってよ~!)と言っていたのを思い出します。
人間の言い争うような声が嫌いで、大声でしゃべり出すと膝に上ってきて、無い方のお手手で口をふさがれたっけ・・・
想い出は尽きません・・・
投稿: 編み助 | 2005/09/02 12:04
ご愁傷さまです・・・
投稿: じゅんちゃん | 2005/09/02 12:47
お初に書き込みさせて頂きます。
ハナさんは寿さんの人生において、良い存在だったようですね。
文字の連なりの間に、すごくそれが感じられます。
きっとハナさんにとっても、寿さんは同じように大切な存在だったと思います。
ハナさんのご冥福をお祈り致します。
投稿: ゆーす | 2005/09/02 13:08
ウチの猫も昨日亡くなりました。年齢は僕よりも一つ上で、17年も生きました。僕にとってあの猫の居ない生活は初めてです。 猫は大好きですが、もう当分飼う気はしません。
ウチの猫、向こうでハナさんに逢ってるかもしれませんね。
投稿: カズ | 2005/09/02 16:32
寿さん、ご愁傷さまです。。
うちも昔は猫を飼ってまして。。
何回か引かれて亡くなっています。
その時はもう飼うのはやめようと思うのですけど、やっぱり飼ってしまうんですよね(^_^;)
今はアパート暮らしなので飼えませんが。
その時は凄く癒されたと思っています。
ハナさんのご冥福をお祈り申し上げます。。
投稿: バガボンド | 2005/09/02 18:07
我が家にも、もうじきハナのように見送る時を迎えそうな老犬(♀18歳)がいます。目も耳も鼻もダメになり、朝の仕事は排泄物の片付けからスタート...時にウンザリもするのですが、思えばこの犬にどれだけ癒されたことか、我が家にやってきたときのあの可愛さ...寿さんのハナに対する気持ちを読み、家のワンコが穏やかに逝けるようにしてやらねばと思います。ハナは本当に幸せな猫でしたね。
投稿: キナコ | 2005/09/02 19:34
動物と一緒にいると
いつかは そのときが来ますが
それまでの 存在は素晴らしいものです
ハナちゃん 向こうで家族と楽しい時間を過ごして下さい
うちの愛犬にも 長生きしてもらいたいです
投稿: ぬっきー | 2005/09/02 20:19
はじめまして。いつも楽しみに読ませて頂いております。
今回のエントリを読んでからもう一度絵を見たら、ハナさんにぴかぴかの右足が描かれているのに気づいてぐっときました。寿さんからさいごに素敵な贈り物ですね。
投稿: あひる | 2005/09/02 21:22
もう1年以上も前から毎日読まさせて、見させてもらってました。
この感傷を極力抑えた文章が逆に泣けます。あひるさんがおっしゃっているように、ハナちゃんの前足が描かれているのを見て、あらためて、寿さんのやさしさが身に染みました。
投稿: nemota | 2005/09/02 23:31
泣きました〜(ToT)
家族同然の猫ちゃんと別れるということは、何回経験してもなれることがありません…(号泣)
でも寿さんのココロの中では、ネコちゃんたちは永遠ですね。
投稿: まや | 2005/09/03 04:38
>編み助
ご飯を運んだ時に、ハナの動向を気にしなくてよくなったのも寂しいことだね。
> じゅんちゃん さん
まあ、命が尽きるのは当たり前のことですから、最後の最後まで一緒にいられたってのはシヤワセなことだと思います。
>ゆーす さん
はじめまして。
ともに過ごしたというのは、実はそれだけでスゴイことですからね。
欠け落ちた穴は、静かに日常が埋めてゆくのですけれど、欠片は思い出として残りますから。
>カズ さん
あらら…。
17歳で亡くなられたのですね。
それは悲しいですね。
ネコで17歳といえば十分に大往生ですね。
ネコに関わらず、動物の死に方って見事ですよね。
突然でそっけないんだけど、まるで死ぬやり方を知っているかのように淡々と準備をして、旅立つという感じで。
「時期が来たから」
という理由のリアルな死は、色々なことを実感させてくれます。
動物を飼うって、スンゴイ大事なことだと思いますよ。
飼ったことのない人と話していると、ものすごい隔たりを感じることがあります。
17年も付き合った動物がいて、本当によかったですね。
それはきっと、一生の財産になりますよ。
間違いなく。
>バガボンド さん
ネコは轢かれますよねえ…。
ウチの周りにはたくさんネコがいて、人間になれすぎているせいかクルマをまったく怖がりません。
だから、クルマを動かす際にはまず下にネコがいないか確認し、いたら蹴散らして動かすんです。
あいつらはホントにアホちんで、動き始めるとまた車の下にもぐるんですよ。
ヽ(`Д´)ノ <アホカオマエラー!
参っちゃいますねえ…。
>キナコさん
介護してくれる飼い主をもったワンコさんは、スンゴイシヤワセ者ですね。
実は、なかなか出来ることではないですよ。
それ。
尊敬します。
>ぬっきー さん
そうですねえ。
死ぬということを目の前で見せられると、色々考えさせられます。
>あひるさん
出来れば、あってほしいなあ・・という願いをこめて、ですね。
高いところから着地するとき、踏ん張りがきかなくて転ぶこともあったので。
>nemota さん
まあ、私も鼻をかみながら描いてましたから。(笑)
>まやさん
まやさんくらいネコを可愛がる方だと、お別れは身を切られるように悲しいでしょうね。
それは縁が完結したってことなのでしょうけど、どうしようもなく空虚で心もとないことですから。
投稿: 管理人@寿 | 2005/09/03 08:34
寿さん、本当にご愁傷様です。
飼い猫、飼い犬が亡くなるのって本当に辛いですよね
しかも、寿さんの家猫ものすごいいはったんですね
ました家では、1度犬を飼っていてなくなったときに家族全員が1週間かなりやばい状態になったのでそれ以来動物は飼わない・・としていたんですが
今は、また猫2匹がいます・・・
と、いってもましたは海外にいるんですが
家族を亡くすのは本当に辛いです
絵みたいに
寿さんの猫達が猫天国からまたたびとか嗅ぎながら
寿さん一家をずーっと見つめてますように!
投稿: ました | 2005/09/03 08:41
ウチの母は、飼っていた動物を埋めるとき、少し小高いところに埋めるのですね。
いつでもウチが見渡せるようにだそうで。
感傷ですけど。
悪くはないですよねえ。
投稿: 管理人@寿 | 2005/09/04 08:45