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昼間の亀と、俺の説得力

世間的には平日の、私の休日。

家から程近い(と言っても、車で30分かかる距離だが。)割と大き目のショッピングモールに立ち寄った。
主な用事はトイレを借りることであり、まあ、そのついでにあまり普段立ち寄らない場所をそぞろ歩いてみようかという気まぐれから発生した行動だった。

そのショッピングモールはやたら広くて大きい。

もともとは生鮮食料品や生活雑貨などのお店が軒を連ねる普通のモンスターモールであったのだが、クルマでしか立ち寄れない交通事情のせいか、周囲の田園色の色濃さか、はたまた折からの不景気の影響か、次々にそう言った店は姿を消し、今では温泉、ボウリング、パチンコ屋、100円ショップなどがすっかり幅を利かせ、果たしてショッピングモールなのか複合レジャー施設なのか非常に微妙な過渡期の渦中にありますといった感じで、確たる方向性を悟らせない、ある意味の異彩を放っている。

お客さんの方もその迷走に対する戸惑いは隠せぬようで、店員さんとお客さんの人口比率は五分五分というマンツーマンビジネスに、あちらこちらテナントが抜け落ちているビジュアルも手伝って、早い話が寂れている。
(最初からそう言えよ。)
 
 
 
そんな中。

私はそのモールの中にある、中古ゲームソフト、コミックを扱っているお店の前を通りかかった。
そして、そのお店の前に設置されているクレーンゲームに視線を吸い込まれた。

何故ならば、

そのクレーンゲームの景品が、あまりに異様だったからだ。

「亀」。

ぬいぐるみでもフィギュアでも、缶バッジでもストラップでもない。
正真正銘、生きとし生ける亀である。

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景品としては、ユニークというよりどちらかというと悪趣味なシロモノ。
ていうか、動物愛護団体が白目むくような暴挙と言える気がする。

おまけに、となりの同じくクレーンゲームの筐体の中には、ロブスターが触覚を揺らめかせているではないか。
この店は、とことんまで「景品は生き物」という方向性を貫きたいらしい。

一貫性を欠いたこのモール全体の姿勢に対するささやかなアンチテーゼなのか、はたまた

「どうせ誰もやらんだろう。」

と多寡をくくった店主が水槽代わりに飼育しているものなのかは判然としなかったが、とにかくモールの中心で動物愛護を叫んでも、それは田園に虚しく吸い込まれてゆくだけなのだろうと悟らざるを得なかった。

しかし、水槽の中の亀は可愛い。
気の毒だとは思うのだが、不謹慎にも可愛い。

片隅に折り重なっているのは何故だろう?

陸地が少ないことへの対処なのか。
是正を求める抗議なのか。
それとも脱出を試みているのだろうか。

亀はひっくり返ると皆、必死に原状回復を目指すものだと思っていたが、中にはひっくり返ったまま諦めている者もいる。

驚いたことに、ひっくり返った仲間を、他の亀が頭で小突いて戻してやっていた。
過酷な環境にいると、仲間同士の連帯感が強まるのは亀も人間も変わらないらしい。

そしてさっきから気になっているのだが、水面にプカリと浮いたまま微動だにしない亀。
果たして生きているのか死んでいるのか。

首も手足も出すでなくひっこめるでなく、ただただ脱力して水面に浮いている。
瞳孔、脈拍までは確認できないので目視による確認だけが頼りなのだが、結局見ている間、その亀が動くことは無かった。

そうやって、10分ほどしみじみと眺めていてふと気付いた。
どうも先ほどから背中に奇異なモノを見るような、それでいて少しの憐憫を含んだような視線を感じる。

やはり、平日の昼の日中から大の男がクレーンゲームの、しかも亀にかぶりつきで観察している画というのは、ある種のしょっぱさと、痛みを伴うものらしい。

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相方の不在は、29歳の男という存在の説得力を著しく損なうものなのだと痛感したことは言うまでもない。

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コメント

ヒェーーーーーッ!
クレーンゲームの景品が生きた亀ぇえええっ!?
ひ… ひどすぎる…。
寿さんの暖かい目が唯一の救いだったことでしょう。

確かに大の男がクレーンゲームの前でジーーッと亀を見ている姿は、ドン引きするとしても…。

投稿: じゅじゅ | 2005/06/29 03:05

ゲームセンターで深夜アルバイトしていた友人の体験ですが

取ったはいいが処理に困り置き去りにされたロブスターと
深夜にがらがらのフロアで鉢合わせするというシュールな出来事があったそうです。

ちなみに水槽掃除や餌やりやってるうちに結構愛着がわいてしまうらしいですよ

投稿: ゆうたろう | 2005/06/29 07:30

>じゅじゅさん
>確かに大の男がクレーンゲームの前でジーーッと亀を見ている姿は、ドン引きするとしても…。

ええ。
私もそれなりに長い人生の中で、あれほど冷ややかな視線を感じたのは初めての経験でした。

そして、同時に、もはや一人で行動するということそれ自体、世間が許してくれないのだと悟った瞬間でもありました。

悲しいことですね。

>ゆうたろうさん
>深夜にがらがらのフロアで鉢合わせするというシュールな出来事があったそうです。

( ;゚Д゚)<オマエ、ナニシテンダ?コンナトコデ

( ´∀`)<オイテカレチマッタノサ

( ;゚Д゚)<セッカクトッタノニ?

( ´∀`)<クウノモアレダシ、カエナインダト

( ;゚Д゚)<セキニントルツモリモナク、トッタノカヨ・・・?

( ´∀`)<ショーガネーヨ。マサカトレルトハオモワナカッタンダロ。

(((( ;゚Д゚)))<オマエ、ソレデイイノカヨ・・・!

( ´∀`)<コドモハ、オヤヲエラベネーカラナ。

(((( ;゚Д゚)))<ロブ・・・

( ´∀`)<オレ、スイソウニカエッテモイイカナア・・・?

( ´∀`)<アア。ミンナ、オマエノカエリヲマッテルヨ

つД`)<テンインノニーチャン・・・

という、無軌道で無責任な人間に打ち捨てられた悲哀が生んだ、哀しみをはらんだシュールドラマが展開されたわけですな。

名前を付けたらもうダメですな。

気をつけましょう。

投稿: 管理人@寿 | 2005/06/29 08:31

Moo-TblogのKOuです。

たしかこの手の生き物キャッチャーは、販売元に動物愛護団体から相当なクレームが行って、販売中止になったような…。

初めて設置されたのが京都なんですよね。街の噂として流れたので速攻で見に行きましたよ。(←行ったのかよ!)

この商品の最大の欠点は、クレーンの届かない死角に獲物が全て移動してしまうこと。正直あの位置じゃ獲れません。

投稿: KOu | 2005/06/29 11:49

KOuさん、お久しぶりです。

私も絵を描くときの資料集めで知ったのですが、ミドリガメやハムスターなどを景品にしたゲームが条例で禁止されたそうですね。

まあ、なら金魚すくいはどうなんだ?
とか、そういう声も聞こえてきそうですが…。

たしかに、DIYなどにあるペットコーナーの犬猫と同じく、見ていて胸が詰まります。

>この商品の最大の欠点は、クレーンの届かない死角に獲物が全て移動してしまうこと。

ああ~、なるほど。
ふつう、クレーンゲームの景品は動きませんからねえ。

獲るのが難しそうではありますな。

投稿: 管理人@寿 | 2005/06/29 13:00

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