掲載~。
昨日、発刊されました「ヤフーインターネットガイド8月号」の付録小冊子、
「ブログまるわかりブック」にて、当ブログ「言戯」が紹介されています。
全国の書店、コンビニ、キオスクなどで発売されていますので、是非、ご購読くださいませ。

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世間的には平日の、私の休日。
家から程近い(と言っても、車で30分かかる距離だが。)割と大き目のショッピングモールに立ち寄った。
主な用事はトイレを借りることであり、まあ、そのついでにあまり普段立ち寄らない場所をそぞろ歩いてみようかという気まぐれから発生した行動だった。
そのショッピングモールはやたら広くて大きい。
もともとは生鮮食料品や生活雑貨などのお店が軒を連ねる普通のモンスターモールであったのだが、クルマでしか立ち寄れない交通事情のせいか、周囲の田園色の色濃さか、はたまた折からの不景気の影響か、次々にそう言った店は姿を消し、今では温泉、ボウリング、パチンコ屋、100円ショップなどがすっかり幅を利かせ、果たしてショッピングモールなのか複合レジャー施設なのか非常に微妙な過渡期の渦中にありますといった感じで、確たる方向性を悟らせない、ある意味の異彩を放っている。
お客さんの方もその迷走に対する戸惑いは隠せぬようで、店員さんとお客さんの人口比率は五分五分というマンツーマンビジネスに、あちらこちらテナントが抜け落ちているビジュアルも手伝って、早い話が寂れている。
(最初からそう言えよ。)
そんな中。
私はそのモールの中にある、中古ゲームソフト、コミックを扱っているお店の前を通りかかった。
そして、そのお店の前に設置されているクレーンゲームに視線を吸い込まれた。
何故ならば、
そのクレーンゲームの景品が、あまりに異様だったからだ。
「亀」。
ぬいぐるみでもフィギュアでも、缶バッジでもストラップでもない。
正真正銘、生きとし生ける亀である。
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景品としては、ユニークというよりどちらかというと悪趣味なシロモノ。
ていうか、動物愛護団体が白目むくような暴挙と言える気がする。
おまけに、となりの同じくクレーンゲームの筐体の中には、ロブスターが触覚を揺らめかせているではないか。
この店は、とことんまで「景品は生き物」という方向性を貫きたいらしい。
一貫性を欠いたこのモール全体の姿勢に対するささやかなアンチテーゼなのか、はたまた
「どうせ誰もやらんだろう。」
と多寡をくくった店主が水槽代わりに飼育しているものなのかは判然としなかったが、とにかくモールの中心で動物愛護を叫んでも、それは田園に虚しく吸い込まれてゆくだけなのだろうと悟らざるを得なかった。
しかし、水槽の中の亀は可愛い。
気の毒だとは思うのだが、不謹慎にも可愛い。
片隅に折り重なっているのは何故だろう?
陸地が少ないことへの対処なのか。
是正を求める抗議なのか。
それとも脱出を試みているのだろうか。
亀はひっくり返ると皆、必死に原状回復を目指すものだと思っていたが、中にはひっくり返ったまま諦めている者もいる。
驚いたことに、ひっくり返った仲間を、他の亀が頭で小突いて戻してやっていた。
過酷な環境にいると、仲間同士の連帯感が強まるのは亀も人間も変わらないらしい。
そしてさっきから気になっているのだが、水面にプカリと浮いたまま微動だにしない亀。
果たして生きているのか死んでいるのか。
首も手足も出すでなくひっこめるでなく、ただただ脱力して水面に浮いている。
瞳孔、脈拍までは確認できないので目視による確認だけが頼りなのだが、結局見ている間、その亀が動くことは無かった。
そうやって、10分ほどしみじみと眺めていてふと気付いた。
どうも先ほどから背中に奇異なモノを見るような、それでいて少しの憐憫を含んだような視線を感じる。
やはり、平日の昼の日中から大の男がクレーンゲームの、しかも亀にかぶりつきで観察している画というのは、ある種のしょっぱさと、痛みを伴うものらしい。
相方の不在は、29歳の男という存在の説得力を著しく損なうものなのだと痛感したことは言うまでもない。
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ある日。
相方と逢っていたときの事。
「パッパパッパッパパラララッパパー!」
静かにラジオの音が流れる車内に、突然進軍ラッパの勇ましいサウンドが鳴り響いた。
戦いの火蓋は切って落とされたのである。
「軍曹おおおお!!突撃でアリマスカー!!」
絶叫する私。
「あ、ゴメンね。私の携帯のメール着信音だよ。」
冷静に返す相方。
「軍曹おおお!!本部からの通信でアリマスカー!!」
「いや?天気予報だねえ。」
「軍曹おおお!!天気による作戦の変更でアリマスカー!!」
「だから、悪かったって。マナーモードにしとくから。」
「軍曹おおお!!」
「ああもう!分かったから・・!」
相方のメール着信音は、進軍ラッパである。
その理由は
「なんとなく、勢いが欲しかった。」
からだと言う。
一体、なんの勢いが欲しかったのかは女子にありがちな小さく頑なな謎ではあるが、時たま発生する進軍ラッパは、何らかの戦端が開かれたことを私に知らしめ、問答無用で脳内にアドレナリンを分泌させるのである。
今日もどこかで進軍ラッパ。
安寧の日々は今いづこ。
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つい先日のこと。
私の開講している陶芸教室に、二人の女性が訪れた。
一人は中国系アメリカ人のJさん。
彼女はホームステイで日本へ来たそうだ。
そして、もう一人がそのステイ先のAさん。
日本人である。
外国人に陶芸を教えるのは初めての私は、意思疎通のやり様を求めて日本人のAさんに尋ねた。
「あのう。彼女(Jさん)は、日本語しゃべれるんですか?」
「ああ~、彼女は英語と中国語とスペイン語しかしゃべれないのよー。」
「…ああ、それだけ話せれば十分ですね。」
とりあえず、日本語による接触は諦めた方がよいことはハッキリした。
日常会話程度の英語が出来るAさんがついているので教える分には問題ないだろうとは思ったのだが、なにしろこれだけマトモに外国の方と交流するのは初めてのことである。
私の日常では、滅多にあることではない。
つまり、チャンスである。
なんとか直に意思の疎通を図りたい。
出来うることなら、陶芸を通して日米間の交流を温めたい。
そんな欲求が、むくむくと胸のうちに膨らんでくるのを感じてしまったのだった。
しかし、物事を伝えるというのはそんなに甘いものではなかった。
英語なら、それなりに単語は知っているし、それを繋げていればなんとかなるだろうと多寡をくくっていたのだが、日本語の中で使われる英語と、本場の英語では発音がまったく違うらしい。
あまり通じないのだ。
仕方がないので、Aさんに訳してもらいながら、それを真似て言葉による接触を試みる私。
相変わらず英語はあまり通じなかったが、奥の手として繰り出した「絵」は、実に有効だった。
「OK、OK!」
の言葉が増えた。
それと、「身振り手振り」。
意外なところでは「擬音」も効果を発揮する。
「絵」や、「身振り」や「擬音」での交流なんて、とても現代とは思えないような原始的な伝達手段ではあるのだが、それだけに「伝わった」時の驚きや嬉しさは、格別であり、新鮮であった。
普段の自分は、周囲にいる人たちに対して言葉が通じるのが当然で、すれ違いや行き違いこそあれ意思の伝達に苦労を感じることはあまり無い。
それだけに、言葉という便利極まりないものに対する慣れが、知らず知らずそれの使いようをぞんざいにして、「伝える」という事の重心を浮かせていたのかも知れないと思わされた。
心がだぶついて、言葉の重心が浮くと、言葉の通じる相手にだって伝わらなくなるもんね。
だからこそ!
「伝わる」ということは、こんなにも嬉しいんだ!
という再発見があった。
これは、割かし大変な発見だと思ったのです。
Jさんの
「アリガトウゴザイマシタ。バイ。」
という挨拶と、
私の
「サンキューベリーマッチ!」
という挨拶は、ある意味あべこべではあったが、大変貴重な体験をさせていただいたことに本心から感謝したことは言うまでもなかった。
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日付も変わった午前1時。
仙台を代表する歓楽街、国分町にいた。
と言っても、別に酒を飲んでいるわけでも風俗に行ったわけでもなく(そういやあ風俗って一回も行ったことないなあ。)、会社の仕事が長引いて、終電も無くなってしまった相方を迎えにゆく道すがら通りかかっただけなのだが。
ごくごく稀に、こうやって深夜の歓楽街を見る機会に恵まれることがある。
ネオンの明かりは健気なほどに煌々と、夜の闇を拒否しているようだ。
そして、そこで働く女性のきらびやかな美しさには、毎回嘆息させられる。
スキの無い動作、戦闘服に身を固めている。
男の私などには想像もつかないほど、あのいでたち、居振る舞いには工夫や修練や経験が忍ばされているのだろう。
しなやかな緊張感がみなぎっている。
その姿を遠目に見るのが好きだ。
ギラギラと眩しいものを、遠くで目を細めて観る楽しみ。
おそらく、私のこれからとは、交わることはないであろう世界の住人。
向こうからこちらは見えづらいと思うが、
こちらからはよく見える。
覗き見のような、やや趣味の悪い密かな楽しみと言える。
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先日のこと。
いよいよ本格的な夏が降り注ぎ始めた環状線。
歩道を、自転車で疾駆する女子高校生を見た。
時間からして下校時間なのだろう。
暑いからして生脚にサンダルなのだろう。
・・・サンダル・・・?
サンダルである。
きっと、紫外線など恐るるに足らんのだろう。
若いって素晴らしい。
非常に健康的で良いとは思うのだが。
・・・最近の高校は、サンダルOKなのか・・・?
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スーパーマーケットなどの駐車場の片隅に、リードを結わえられている犬は、大体が怯えきっている。
ある者は吼えまわり、
ある者は腰を落としてうなだれている。
悠然たる態度の犬はいまだかつて見たことがない。
彼らは散歩の、あるいは買い物のついでに連れ出され、人の多く集まる商店の片隅にくくられたのだ。
(あれ?どうかしたんですか?)
戸惑う犬を尻目に、飼い主は商店の中へ消えてゆく。
(ええええ~?ちょちょちょちょっと待ってくださいよ置いてかないでくださいよマジで周り知らない人ばっかじゃないですかあああ行かないでえ~。)
つい先ほどまでの散歩によるシヤワセ絶頂気分は消えうせ、不安と恐怖の恐慌の中に放り出される。
そう。
彼らは「待機犬(たいきけん)」となったのだ。
「待機犬」というのは、傍目には非常に気の毒ではあるのだが、不謹慎にも微笑ましいものである。
出来うる限り物陰に潜み、腰を砕いて上目遣いに周囲を窺っている姿がいい。
普段のつぶらな瞳ではなかなかお目にかかれない白目がよく見えるのもポイントだ。
人が近づくたびに一瞬期待の眼差しを向け、見知った顔でないことを確認するとハッキリと落胆するのも可愛い。
尻尾に感情のドラマがある。
普段、飼い主を伴ってすれ違う近隣の飼い犬たち。
ナワバリを主張して吼えるのが業務の一つではあるのだが、待機犬同士となった今、隣りあっていても吠えつかない。
一時休戦。
同志、連帯…そういうのではなく、お互いそれどころではないのだ。
リードや首輪ナシを通じて、人間と繋がっていないと住みづらい世の中なのだと、彼らはよく知っている。
やがて、買い物客と買い物カゴと一緒に、飼い主が吐き出されてくる。
それを見た待機犬は、一瞬身をすくめて「わん!」と吼える。
口元からベロと一緒に笑みがはみ出している。
ちぎれそうなほど激しく振り乱すしっぽ。
(ああああもう!ヒドイじゃないですかビックリしたじゃないですかどこいってたんですかすごく怖かったですよもうやめてくださいよほんとにもう!)
足元に飛びつき、喜びというより安堵を体いっぱいで表現する。
その様はこちらまで救われるようだ。
待機犬は、必ず飼い主が帰ってくるから見ていて楽しい。
ハッピーエンドが約束されている。
逆に、待機犬を見かけてしまったら、その結末を確かめるまで離れられなくなるということもあるのだが…。
それはそれでいいような気がする。
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「あ、趣味のコーナー。」
「…。」
「続いてパソコン雑誌コーナーを通ります。」
「……。」
「そして、文庫コーナー。何か読みたいものがあるんでしょうか。」
「………。」
「美術コーナーに来ましたねえ。」
「…………。」
「もしかして、当て所なく歩いているのでしょうか。」
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つい昨日のこと。
店が休みということもあり、私は自室にこもって、依頼されたイラストの納期に間に合わせるべく、タブレットに向かい、ペンを打ち込み続けていた。
作業が一段落して、集中が緩んだこともあり、小休止をする。
部屋の窓から見える山の緑は、目の疲れを癒すのに最適である。
足元のポットを引き寄せ、紅茶を淹れる。
体中の筋肉がむずがゆい。
思えば、先ほどから数時間、縮こまりっきりだ。
鈍っているのだろう。
(むっ!)
椅子に座ったまま、背筋を伸ばし、腕を掲げて伸びをした。
その時だった。
背後、それも足元から、
「みしみし・・」
という音がしたかと思うと、突然・・・
という炸裂音。
体の重心が無理やり後方に引っ張られるような感覚があった。
(あ!脚が折れた…!?)
そう。
数本放射状に伸びている椅子の脚の一本が、連日の酷使に耐えかね、ついに壊れてしまったのだ。
(こ、このままではまともにバックドロップを食らってしまう…!)
必死に重心を前に引き起こし、なんとか回避を試みる私。
しかし、
椅子に付属しているキャスターは、無情にもコロコロと前方に転がってゆく。
それはまるで、日ごろの圧政に耐えかねた椅子の脚たちが、ついに憤懣を爆発させ、うち一本が身を捨てて体勢を崩し、残る2本が止めを刺す。
そうとも取れる見事な連携だった。
かくして、私の体は部屋の片隅に見事な弧を描き、背中から床に叩きつけられた。
椅子は再起不能。
座れないことはないが、常に重心を注意しないとお尻を掬い取られる危険性が付きまとう。
下に雑誌などを挟んでもみたが、無駄な抵抗であった。
作業などもってのほか。
(・・なんで、こう忙しい時に壊れるかな・・!)
と、タイミングの神様を呪いながら、最寄のホームセンターまで椅子を買いに走ったことは言うまでもない。
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Musical Batonというものが届いた。
それも、コメント、メール、トラックバックにいたるまで、それこそ5~6本届いた。
あまりに一気に来たのでビックリしたことは言うまでもないのですが・・・
困ったなあ~!
私、音楽ってあんまし聴かないんですよ!
クルマ乗ってる時も、ほとんどラジオだし。
こういう質問はサチに聞くと面白いかも知れんなあ~と思いつつも、一応お答えします。
でも、全部は無理かなあ~・・。
まあ、がんばろう。
Question.1
Total volume of music files on my computer?
(コンピュータに入ってる音楽ファイルの容量)
74メガバイト。
パソコンを入れ替えた時に、ためしに入れてみたものとか、姉から頼まれたダビングのデータがそのままのヤツとか。
Question.2
Song playing right now?
(今聞いている曲)
ああ~、帰りが遅くなった時とかに、眠気覚ましのマキハラノリユキさん。
「どうしようもない僕に天使が降りてきた」が好きだなあ。
旋律が良いし、歌詞というか、歌われてる世界が良い。
結局ノロケだし。
Question.3
The last CD I bought?
(最後に買ったCD)
前の質問の歌が入ってる、マキハラさんのベストアルバム。
タイトルを調べたら、『Completely Recorded』ってヤツだって。
Question.4
Five songs(tunes) I listen to a lot, or that mean a lot to me?
(よく聞く、または特別な思い入れのある5曲)
①カーペンターズ:「トップ・オブ・ザ・ワールド」
以前にも書いたとおり。
②槙原敬之:「どうしようもない僕に天使が降りてきた」
前述のとおり。
そういやあ記事も描いたっけ。
こういう女性、好きだなあ。
③尾崎豊:「きっと忘れない」
あの時、この歌が届いていれば、どうなっていたのかなあ・・。
まあ、考えてもしょうがないことだけど。
④槙原敬之:「やさしい歌が歌えない」
歌詞の内容が、とても分かる。
激しく分かる。
⑤フェイ・ウォン:「eyes on me」
切ねえんだ。
曲も詩も。
Question.5
Five people to whom I'm passing the baton?
(バトンを渡す5名)
ええ~・・どうしよう。
こういうのって、トラックバックとかするのが難しいんですよねえ。
関係ない話題にすることになるし・・
もし、ご迷惑でしたらトラバ削除お願いします。
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喫茶店のテーブルの上には、温かいお茶と、いくつもの話題が載っている。
その日は、どちらかというと相方の話の方が割合が多くて、私は対面で「うんうん。」とうなづいたり、少し質問をはさんだり、時には茶々を入れたりしながら、会話を楽しんでいた。
相方は、そうやって話しに夢中になっていると、かならずある口癖を出す。
それは、話しがだんだんとヒートアップしてゆき、ある臨界点に達した時。
突然、「はっ」とした表情をして、黙りこくる。
そして、こう言うのだ。
「ごめんねー。私ばっかりしゃべってるよねえ。」
「っていうか、止めてよ!」
と、謎の逆ギレまでする。
別にこちらとしては全然構わないのだが、相方はバツが悪いらしい。
それらも含めて、相方の話は面白い。
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服屋さんにて。
品物を物色しながら、店内で夢中で服を選んでいるお客さんを観察するのは、私の日常の楽しみの一つである。
中でも見どころとして挙げられるのは、ここだろう。
それは、(妙齢の)女性客が、何かしらの琴線に触れた衣服を手に取った時のこと。
ためつすがめつしながら、色、柄、肌触りなどが、自らの趣味趣向に合致するかを慎重に検討している。
そして、熟考の結果、
「今回は見送りという方向で・・。」
ということになり、その品物を棚に戻す時に発生する。
すこし背筋を反らせてアゴを引き、手を目いっぱいひきつけ、胸の上に軽く服を乗せるようにしてたたむ。
そして、全体にたわんだそれを、軽くピッピッと張りなおし、そっと棚に戻す。
コレだ。
その仕草に、たまらない趣きを感じてしまう。
チロっという上目遣いもズルイ。
見た目のインパクトもさることながら、
思いがけないところでふと香る、家庭的な空気。
垣間見える日常的魅力が相乗効果となり、
衣服をたたむ女性の姿は、思わず後ろから抱きすくめたくなるような破壊力を発揮する。
つまり、新婚家庭的グッジョブだ。
服屋さんの店内には数多のグッジョブがあるが、いたるところで瞬くように発生するそれは、夏の花火のようなグッジョブと言える。
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生まれたばかりの「ツナガリ」は、丸くてツルツル。
手がかりというものに乏しい。
それは美しいものではあるけれど、扱いづらいものでもある。
だからみんな、それが扱いやすくなるように喜びのヒダやデッパリ、哀しみの汚れやヘコミをつけてゆく。
その人のことを、好きになったり、嫌いになったりしながら。
「つかみどころ」を作って、確かめて。
「強いツナガリ」というものは、得てしてみすぼらしいものが多いものだもんなあ~・・。
と、半端に知った風なことを言ってみるのだった。
相方との「ツナガリ」が出来て間もない頃のこと。
まだお互いの距離感がつかみきれていない我々は、ともすれば「気まずい」とも言えるような、眩しい気恥ずかしさの真っ只中にいた。
「あ、あのさあ。いつも指輪してるよねえ。」
たまたま目についた相方の指先に話しをすがりつかせる私。
とにかく会話の取っ掛かりが欲しい。
「あ・・コレ?・・うん。」
相方は薬指から指輪を外すと、
と、私の手のひらにそれを押し付けてきた。
「・・・え?くれんの?」
「うん。」
「いや、悪いよ。」
「私、同じの持ってるから。」
つまり、ペアリングというヤツだ。
もともと装飾品はおろか、腕時計さえ身につけない絵に描いたような朴念仁の私。
その照れと狼狽ぶりは推して知るべしである。
図らずも自分のものとなったその指輪を、しげしげと眺めた。
銀製。
重厚な見た目で、飾り気がない。
よく見ると、側面に刻印が施されている。
『CHAIN LUCK DOWN』
「この、『CHAIN LUCK DOWN』って、どういう意味?」
英語が苦手な私は、何気なく相方に聞いてみた。
「『幸運を繋ぎとめる』とかいう意味だよ。」
相方は、少し視線を落としながらそう応えた。
(『幸運を繋ぎとめる』…かあ。)
相方が、そういうメッセージをこめてくれたのかは定かではないにしろ、自分という存在が、相方にとっての『幸運』と言われたようで、とても嬉しかった。
それから2年ちょい。
そのリングは私の胸元と、相方の指で鈍く光っている。
あれから幾多の喜びと、大きな哀しみがいくつもあって、我々のツナガリはさまざまにカタチを変えた。
変わらないのは「つながっている」ということだけ。
相方の、『CHAIN LUCK DOWN』。
『繋ぎ止めたい幸運』になるためにも、がんばらにゃならんなあ・・と思うのである。
このツナガリが、途方もなくみすぼらしく、強いものとなるために。
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私は相方を「サチ」と呼び、
相方は私を「トシさん」と呼ぶ。
それは2年間の付き合いで、自然と定まった呼び名である。
「呼び名」と言えば、『お前』という呼び名がある。
『お前』。
かなり親しい対等な関係の者、または少し目下の者に対して使われる呼称だと思う。
そういった意味では、かなり限られた関係の者にしか使われない言葉だろう。
よく、恋人という間柄の男女で、男の方が女性を『お前』と呼んでいるのを見かける。
あれは、とても親しい感じがしてうらやましくもあるのだが、私が相方を『お前』と呼ぶことはない。
どうも、『お前』という言葉は居丈高な印象が拭えないし、いかにも
「主導権を取りたがってます。」
という意思がありありとしていて、恥ずかしいからだ。
しかし先日、この『お前』という呼称が意外な展開を見せたことがあったのである。
その日、私と相方はいつものようにとりとめのない話を楽しんでいた。
そのうちに、相方独特の憎まれ口を含んだような冗談が、心地よく私のほほにパチンと当たった。
(こんにゃろうめ。)
と思いつつ、どうしてくれようかと切り返しに頭をひねっていると、ふとある言葉を思いついた。
『お前』である。
普段、滅多に言わない『お前』という言葉を使って、相方に意外性で攻めてやろうと考えたのだ。
私はさっそく、使い慣れない呼称を載せて言葉を返した。
意外そうな相方の顔。
(してやったり。)
私は小さな勝利を確信した。
ところが相方は、『お前』という言葉を咀嚼するようにうつむき、黙りこくっている。
冗談の切り返しのつもりだったのだが、もしかして予想以上にカチンときたのかと焦り、
と、思わず謝った。
なんとなく、バツの悪い空気が流れている。
(そんなに悪いこと言ったかなあ・・?)
と、少し後悔する私。
その時である。
相方の口から、意外な一言が放たれた。
「えええええええ???」
驚きを隠しきれない私。
不意に出た私の『お前』発言は、相方の中に『男らしさ』ひいては『著しいセックスアピール』として響いたのである。
思わぬ副産物に狼狽すらしながらも、喜悦を隠し切れない私。
しかし、すぐに「はっ」とした。
それはすなわち、『お前』という一言に「男」を感じるほど、普段の私からはオスのニオイがしていないということではないのか。
一瞬の喜びも束の間。
またしても、内心地の底まで落ち込んだことは言うまでもない。
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「そろそろ、携帯電話がいるかも知れん。」
と、数ヶ月前から考え続けているのだが、まだ導入まで至っていない。
以前、持っていた携帯電話を不慮の事故で亡くし、約2年間。
「我、二携帯を持たず。」
と喪に服していた私だったが、連絡がつかないこと、次々と姿を消し続ける公衆電話を探して回る労力と時間、普通に話すだけで最低100円はかかる通話料(10円だと10秒くらいだかんね。)などなど、不便を痛感することがいよいよ増えてきたのである。
そこまで不便を感じるならば、普通に買えばいいじゃねえかと思うのだが。
最大のネックがある。
それは、
自宅が携帯電話の電波が通じない地域にあるということ。
どのメーカー、機種でも無理なのです。
いや、かろうじてauのみ、場所によっては入るらしいのだが・・。
自室まで来るかどうかは非常に微妙な線だ。
かなり分の悪い賭けと言える。
陶芸もピザもイラストも、すべて自宅に仕事がある身としては、生活の8~9割は圏外にいるということであり、残りの1~2割の部分のために、月数千円もかかる携帯電話を導入するというのはいかがなものかと思い悩んでしまうのである。
せめて、ほんの微弱でも電波が立ってくれれば購入の動機を満たすことができるのだが・・。
買うべきか、買わざるべきか。
それが問題だ。
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どんな店に立ち寄っても、相方は陳列されている品物をとにかく手に取り、触って回るのだが、アレは触覚から何かを読み取っている事は間違いないと思われるのだが、一体何を読み取っているのだろうか・・。
・・気になる。
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昨日のこと。
薄曇りの空がかかる仙台の街を、雑踏の濁流に押し包まれながらブラブラと歩いていた。
後ろから押し付けるような足音と、前から迫り来る対向歩行者に轢かれぬよう、懸命に歩いていたのである。
その時だった。
主に縦方向にのみ気を取られていた私に、横合いからスイッと近寄る影があった。
思わず受け取ってから気づいた。
それは、ティッシュ配りのお姉さんだった。
本来、街頭でティッシュやチラシを受け取るのがニガテな私。
相手も仕事でやっている以上、受け取ってあげるのが一番いいとは分かっていても、どうもよくない。
いつもなら、『ティッシュ要らないの構え』を頑として崩さず、ご遠慮願っていたのだけれど、その日はどこかしら隙が見て取れたのか、たまたま広告対象年代にことごとく当たっていたのか、次々にティッシュやチラシを突きつけられることとなったのである。
しかも、相当の手練を揃えてきたらしく、拒否のタイミングを逃して被弾することも多々あった。
交わすほうも上達するが、配る方も同じように上達するということなのだろう。
これには参った。
次々に襲い来るティッシュやチラシ。
まるで追い掛け回されているかのような錯覚さえおぼえる。
しかし、人間というものは、追い詰められるとその環境にある程度は順応し、自分なりの対処法を確立してゆくものである。
私はひらめいた。
ティッシュ配りをかわすには、オバチャンが有効であるということに。
すなわち、配る人と自分との対角線上にオバチャンを配置することにより、ばら撒かれるティッシュを吸着。
配り手が、次のティッシュを装填している間に、無事通過するという技を身につけたのだった。
『オバチャンバリアー』である。
今回は、この技で窮地を脱したが、今度は相手も新たな技を考案してくるだろう。
何故ならば、配り手と私の戦いは始まったばかりであり、終わりの来る日など無いのだから。
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先日のこと。
相方がこんなことを言い出した。
「ねえ、トシさん。今、『ほぼ日』でハラマキ売り出してるじゃない?」
「ああ、売ってるねえ。」
ポットから、琥珀色の湯気を立たせつつ、紅茶を茶漉し経由でカップに注ぎながら答える私。
湯気をあごに当てて、香りを楽しんでいる。
「アレ、竜と虎があるんだよ。二人して買わない?ハラマキ。」
「ああ、いいねえ。買おうか?俺、竜が良いなあ。」
「いや、竜は私。」
キッパリと言い放つ相方。
まっすぐこちらを見据えて、譲る気配は微塵も感じられない。
「え~?でも、オレも竜がいいなあ。」
「だってホラ。私、辰年だから。竜。」
「それを言ったら俺だって辰年だよ。じゃあ、竜と竜でいいべや。ダブルドラゴンで。」
「それはイヤ。」
またも素気無く切り捨てられる。
相方は、私が同じものを選ぶのを嫌う習性がある。
理由は、『同じものではツマラナイ』からなのだそうだ。
しかし、竜か虎かと問われれば、私だって竜に若干のこだわりがある。
譲りたくない。
「だって、オレ、虎にする理由がないから。竜なら買ってもいいよ。」
「う~ん・・。そうかあ。・・じゃあ分かった。
結局、折り合いがつかないままハラマキの販売が終了してしまったのは悔やまれるところである。
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最近の私のお気に入り。
それは、
よく立ち寄る書店に新しく入ったバイトの女の子である。
別段、目立って器量良しというわけでも(いや、普通に可愛いのだけれど)、話しかけて仲良くなったわけでもない。
ただ、
『今しか味わえぬ、旬。』
を持ち合わせているのだ。
それは、お目当ての本を持ってレジを行ったときに起こる。
カウンターに本を置く。
少し奥で作業をしていたその娘がいそいそと駆け寄ってきて、まずこう言う。
・・グッジョブ。
ピッピッピ・・
「お会計、1,060円になります。」(ちら)
・・グッジョブ・・!
「ありがとうございましたあ。」(ちら)
・・グッジョブ・・・!!!
すなわち、「目線」である。
挨拶を発する時に、おずおずと向けられる上目遣いが大好物なのだ。
接客業はニガテなんだけど、うつむいたままというのは失礼だから、がんばろう。
という精一杯の色がある。
その他にも、少しの恐れとか、恥ずかしさとかの色も混ざっていて、とてもキレイなのだ。
つまり、
分量の定まらない時期に、少しだけ余剰に出た誠意の色。
日常の上澄み。
これから、仕事に慣れてくるにつれて確実に薄まってしまうであろうそれを、是非大事にしたい。
そう思うオッチャンなのであった。
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ピリリリリリリ!ピリリリリリリ!
21時少し前。
自室のパソコンでイラスト関係の仕事をしているところへ、一本の電話がかかってきた。
この時間の電話は、大体相方からと相場が決まっている。
今日も遅くまで仕事をして、ようやく今、終わったのだろう。
電話の子機を取り上げ、耳へと運ぶ。
「はい、もしもし。」
受話器の向こうからは、ビルの中を歩いていると思しき足音が響いている。
「あ、夜分遅く申し訳ありません・・●●●と申しますが・・」
相方の声だ。
ウチの家族は全員声までよく似ているため、一応、常識的な挨拶で探りをいれている。
「おー、サチ。今、終わったの?」
「ああ、うん。そう。今、終わった~。」
「そうかあ。お疲れさん。」
「いやいや。トシさんこそお疲れさんです。」
その週は相方の仕事が忙しく、前回逢ってから長く逢っていなかった。
・・・と言っても、中3日ほどだが。
時計は20時58分。
逢うには少し遅めの微妙な時間である。
仕事でクタクタであろう相方の体力も考慮し、受話器の向こうの出方をうかがった。
相方は、こう切り出した。
これで決まった。
相方の「今日は無理だよね。」という決め付けたセリフは、「来て。」ということなのだ。
そういった思念の陽炎が目の前に揺らいでいる。
ちなみに、
『今日はどうしようか?』
という時は、そんなに切迫していない。
とにかく、
『今日は無理だよね。』
に、『そうだねえ。』と応えようものなら、相方の落胆ぶりは大変なものとなり、それから数日間、チクチクと責められる。
つまり、『かくなるうえは、行かねばならぬ。』なのだ。
「んで、これから行くから。」
「ホントに?いいの~?大変じゃない?」
「いやいや。まあ、これから出ると、駅に着くのは21時40分頃になっちゃうけど・・。」
「私もこれから地下鉄だから、ちょうどいいと思うよ。んじゃ、待ってるから。」
「あいよ。またあとでね。」
折りよく、一段落ついていた絵を保存し、着替える。
空には雲が立ちこめ、月も見えない。
(なにも、素直に『逢いたい』って言えばいいのになあ~・・。)
と思いつつ、ウキウキと車のキーをひねるのであった。
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前回までのあらすじ:寿は『いつもの』が通じる店が出来て、有頂天だった。
というように声をかけてもらえるようにまでなった。
嬉しはずかし常連ライフ。
その店の、「客」というピースの中でも、少しだけ大きい位置を占めているような優越感。
そんな日々はきらめくように、めくるめく過ぎていった。
しかし、人というものは欲していたものを手に入れても、それに満足できるのは束の間でしかない。
また、次の、さらに高みにあるものを欲することとなるのである。
人の欲は限りなく、果てしない。
そういう度し難い業を背負うのが、人の人たる由縁なのだ。
それは、いつものカフェレストランでいつものようにお茶をするべく、メニューを見ていたときのことだった。
「アッサム、ホットで。」
(つまり、いつものね。)
ウェイトレスのお姉さんに注文を預けた。
対面の相方は、まだメニューを見て検討している。
そして、ゆっくりと口を開いた。
「エ~ト・・この、リンゴとベジタブルのジュースをください。」
(!?)
いつものコーヒーではなく、どういうわけか今まで飲んだことのない、かなり変り種のジュースを指名してきたのである。
驚きのあまり、思わずそのようなことを口走ってしまう店員さん。
そして、あまり発注する人がいないせいなのか、そのメニューの詳細な説明を始めたのである。
「これはですね!小松菜とブロッコリーが入ってまして、それにリンゴとレモンを加えてあるジュースなんですよお。『飲みやすい青汁』って感じですね!」
ニコニコとうなづきながら説明を聞く相方の横で、私は敗北感に打ちひしがれていた。
(意外性・・・!)
いつものコーヒーにゆくと見せかけて、意外性に富んだメニューを発注する呼吸・・・!
結果、相方は知ってか知らずか強く相手に印象を残すことに成功していたのだ・・・!
『いつもの』を獲得し、ようやく肩を並べたかに見えたのも束の間。
相方は、またもや私を軽々と抜き去っていったのである。
我が相方ながら、恐ろしい女だと戦慄したことは言うまでもない。
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昨日の、ワールドカップ最終予選。
日本が北朝鮮を見事、2-0で破り、ドイツワールドカップ出場を確定させた。
まさにグッジョブ!!
素晴らしい試合でした。
昨日の試合で、珠玉のゴールといえるのはもちろん、柳沢選手の先制ゴールでしたが、私が印象に残ったのは2点目の大黒選手の追加点のほうだった。
数人のディフェンスラインの油断を見切って繰り出されるスルーパス。
同時に背後から飛び出すフォワード。
置き去りにされ、必死に追いすがるディフェンダー。
完全なるキーパーとの一対一。
キーパー圧倒的不利の状況での駆け引き。
シュートフェイント!
つられて滑り込むキーパーをかわす!
そして、目の前には無人のゴール。
大黒選手は、慎重に、確かめるようにインサイドキックでボールを蹴りこむ・・・。
・・・
ううう、美しい!
美しすぎる!!
あの、
『完全に勝負アリ』
の瞬間に、とてつもない『美』を感じてしまうのです。
思わずテレビの前で
「うっひゃひゃひゃひゃ!!」
と身もだえして、奇声をあげてしまいましたとも。
とにかく、サッカーワールドカップドイツ大会出場、おめでとうございます。
日本代表の皆様。
本戦でも頑張って、またあの
「美しすぎる瞬間」
を堪能させてくださいませ。
ガンバレ!
日本代表!!
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ついに、というべきか。
通い続けた実績が実を結んだ・・・と思われる。
行きつけのカフェレストランで、「アッサムティーの人」という認識が成立したのである。
これは、自分にとって偉業と言ってもさしつかえのない事件であった。
ある日のこと。
いつもの店に相方とお茶を飲みに出かけた。
一連の流れでメニューを開き、今日の発注を検討する。
とはいえ、私は頑なにアッサムティーなのだが。
その時である。
オーダーを取りに来たいつものウェイトレスさんが、このようなことを持ちかけてきた。
「あのー。今日はですね。『ケーキセット』があるんですよお。コーヒーとか紅茶にケーキがついて、お安くなってます。」
「へえ~。どうする?サチ。」
「ああ~、じゃあ、私、それで。」
「んで、こっちもそれで。」
即決する我々。
店員さんはメモを取りつつ、
「じゃ、いつものようにコーヒーと紅茶でいいですね?」
と聞いてくるではないか。
『いつもの・・』
『いつもの・・』
『いつもの・・』
鼓膜にこだまする甘美な響きに、しばし打ち震える。
私が、『紅茶の人』と認識されたのを知った瞬間であった。
しかし、まだ予断は許さなかった。
『紅茶』まではいいとして、つぎは的確に『アッサム』を持ってきてもらわなければならない。
その店には、『アッサム』の他にも『ダージリン』、『アールグレイ』、『セイロン』があるのだ。
もし、間違えて『アッサム』以外の銘柄が来た場合、先ほどまでの歓喜の半分がぬか喜びと化してしまう。
もちろん、店員さんにしてみれば、私だけがお客でないことは分かっている。
分かっているのだけれども・・・!
私は不安を胸に抱き、緊張しつつもアッサムであるべき紅茶が運ばれてくるのを待った。
数分後。
銀色のお盆に、ポットと茶漉し、カップが運ばれてきた。
緊迫にワナつきながら、一口すする私。
味を確かめる。
それから程なくして、世の中、上には上がいると思い知らされることとなるのだが・・・それはまた別のお話。
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季節は初夏。
とはいえ、まだまだ夜風は涼しいというより肌寒い東北地方。
私と相方は、いつものようにお茶を飲み、家路に就くべく駐車場へと歩を進めていた。
その時である。
相方が、突然私の腰に手を回してきた。
つまり、公然たるイチャイチャ行為である。
ノロケを世界に発信するのは好きだが、人前でイチャつくのはニガテな私。
嬉しくも恥ずかしい。
「腰に手を回すのってさあ。普通、逆だよね。」
照れ隠しに「常識」などという野暮を持ち出す。
「そうだねえ。でも、トシさんはやってくれないでしょ?」
鋭い突っ込みで返す相方。
たしかに、自発的に公然たるイチャイチャ行為に及ぶということは、我ながら想像が出来ない。
しかし、ここで諾々と負けを認めてよいものか。
それはあまりに悔しい。
私は思わずハッタリを口に出してしまった。
「ええ~?いやあ。オレだって、『やれ』って言われりゃやるよ。」
私の瑣末なハッタリを、一瞬の間も置かずに粉砕する相方。
いよいよ追い詰められる私。
こうなればやるしかない。
やるより他に進むべき道は無い。
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人間には、性格の善し悪しに関わらず、「波長の同期、不同期」というものがある。
先日、私の開講している「一日陶芸教室」に、一組の男女が訪れた。
男性の方は、いかにも気のいい優しげな人柄、女性のほうもとても美人で礼儀正しく、大変明るい上に性格も見る限り可愛いというナイスカップルであった。
そのひとつひとつに、「打てば響く」ような、「歯切れがよい」というより、「威勢がよい」返事を返してくる女性。
自らまばゆい光を放出するような人柄に、モノを教えながらもすっかり圧倒されてしまう私。
およそ万人受けするであろうこのような人柄は、どうも自分には眩しすぎて、「覇気」とも呼べるその波動にすっかり当てられ、消耗してしまうのである。
数十分後・・・。
無事に作品が完成して、
「ありがとうございました~♪」
という挨拶を残して退出したのを見届けてから、椅子に座ってしばらくぐったりと休憩しつつ、やや日陰を好む己の性格を再認識したことは言うまでもない。
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先日の「歯の磨き方で見る心理テスト」。
兄の話では、同じ番組で「Tシャツの着方で見る心理テスト」というものもあったらしい。
なんでも、Tシャツを着る時に、頭から通し始める人はマザコンで、袖から通す人はそうではないのだという。
つまり、小さい頃に母親にTシャツを着せてもらっていたクセが残っている人は、無意識に頭から通し始めるから・・・とのことだった。
その日の晩。
相方とお茶を飲んで談笑している時に、その質問の話になった。
「私も歯を磨くときは奥からだよ。」
「まあ、サチはそうだろうねえ。」
「・・それってどういう意味よ・・!」
「いやあ、ふふふ。じゃあさ、Tシャツ着る時、どっから着始める?」
「Tシャツかあ~・・・」
「頭?ソデ?」
「あたしは両方同時に通しちゃうなあ・・。」
「ええ!?」
予定外の答えにうろたえる私。
教えてもらった答えは、「頭」か「ソデ」しかなかった。
大抵の人は頭かソデのどちらかを先に通し、着用までの橋頭堡とするはずである。
それが大人の着方ではないのか。
「難しくないか?頭と腕を同時に通すのって。」
「いや?いっぺんに『どーん。』って。」
いっぺんに『どーん』・・・。
つまり、こういうことだろうか・・・。
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ある朝のこと。
突然、兄から妙な質問を受けた。
「トシ、おめえや~、歯磨くとき、前歯から磨く?奥歯から磨く?」
質問の趣旨は分からないが、言われるがまま自分の歯磨き時の磨く順序を思い浮かべた。
普段、私は必ずと言っていいほど奥歯から歯を磨く。
なぜならば、歯磨きに飽きる前に入念に届きにくい奥歯を磨きたいからである。
歯磨きもさすがに29年もやっていると、飽きる。
「・・・奥歯からだねえ。」
「奥歯!ほほ~。母ちゃんは?」
たまたまそこにいた母にも同じ質問をする兄。
「私は前歯だねえ。」
「あっははは。そうなんだあ。ふーん・・」
「・・・」
満足げに黙り込む兄。
質問の意味が分からずに黙然と兄の顔を見る私と母。
(んで・・・?)
という沈黙が降りる。
相変わらず黙りこくる兄。
わけのわからない「タメ」にイラつきを抑えきれず、声を揃えて詰問する。
お前は「みの氏」か。
その「タメ」はいらん。
「あ~、ははは。いやね?こないだテレビでやってたんだけど、歯磨きの時、奥歯から磨く人は『カッコに構わない人』で、前歯から磨く人は『ナルシスト』なんだって。」
「・・・ふ~ん。」
「っつーか、そんなこと普段の生活から分かってるべやねえ。」
白けた顔の母。
「トシなんて、最近ようやく少し色気づいてきたけど、その前なんて浮浪児みたいなカッコしてたじゃない。」
「まあ、僕なんかは『男は見た目じゃない』と思っていたからね。」
「でも最近、服買うようになったよな。」
「・・・うん。世間に対する説得力の必要性を感じてねえ・・・。」
「そういう母ちゃんなんてさあ、たまに洗面所で歯磨いてるの見かけると、踊りだすんだよ。ニッカー!っておもっきし前歯磨きながら。」
実話である。
母は歯磨き中にたまたま目が合うと、前歯を殊更強調しながら踊りだす。
「『ナルシスト』に決まってるじゃんねえ。」
「んだよ。『美は一日にして成らず』だよ。」
妙なところで意見が一致する母と私。
「・・・もういいわ。お前ら消えろ。消えてしまえ。」
要するに、ウチのように剥き身の自分で生きている一家には、心理テストなどという回りくどい探りは一切不要だということなのだ。
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先日のこと。
相方とゴハンを食べ終わり、会計を済まそうとレジへ伝票を運んだ。
いつもなら代金の総額をだいたい半分コして支払うのだが、その日は相方のほうに手持ちが少なかったため、私が全部出すことにしたのである。
やや重めのドアをこじ開けて、肌寒い夜の空気を吸い込む。
お腹にはたった今収めたばかりの美味しい料理が温かく、心地よく重かった。
「いやあ、今日はおごってもらっちゃってごめんね。」
相方がそう切り出してきた。
「ん?ああ、いいよ。持ってるほうが出せばいいんだし。」
「今度、私が出すからさ。」
「うん。」
「すみません、貧乏人で・・。」
「いやいや、たまたま今日無かっただけでしょう。(笑)」
「ゴメンねえ・・ダメねえ。私。」
こういうしつこいほどの卑屈っぷりは、相方独特のネタである。
殊更卑屈に見せて、こちらが困る様を見て楽しんでいる。
長い付き合いだけに、そのことは十分に知っているのだ。
lここでいつもなら、
「わかった、わかった。」
というところなのだが、その日は気まぐれに変化を持たせてみようと考えた。
奇策という名の刺激の風を送り込んでみようと考えたのだ。
「どうせ私は貧乏なのよ・・!」
とニヤニヤしながらつぶやく相方に、
と、サワヤカ極まりない笑顔を向けた次の瞬間。
豹変して見せる私。
それを受けて相方は微笑みを浮かべてアゴを引き、ツカツカと間合いを詰めてきた。
(ヤバイ・・!)
それはすなわち戦闘体勢である。
もはや交戦はまぬがれない。
私は相方の初手を定石どおりの「脇突き」と判断し、必死に脇腹のガードを固めた。
・・ぬかった。
こちらの奇策に気さくに呼応するかのような奇策。
相方の革靴は、正確に私のヒザ関節を直撃した。
「コン。」
という乾いた音が、いっそう痛みを倍加させる。
「いっでえ!・・ちくしょう!まさか蹴りで来るとは・・!」
痛みよりも、相方の奇策がガッチリハマったことに対して悔しがる私。
「あっははは!『額づけ、貧乏人』とか言うからよ!」
予想以上に見事に決まったローキックに自分でも驚き、可笑しがる相方。
「・・ごめんね、大丈夫?足が止まらなくて、意外に強く蹴っちゃったよ。」
人間の関係には、「いつものパターン」というものが存在する。
たまにそれを外してやるのも意外性という刺激でいいものではあるが、たいていの場合、いつもよりも被害が大きくなるものなのだと再確認したことは言うまでもない。
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6月3日発売の『誰でも簡単! 手取り足取り「自分流」ブログ入門』という本に、サンプルブログとして当ブログ「言戯」が紹介されております。
発刊元の技術評論社様のご好意で見本誌を送っていただけることとなり、それが発売より一足早い本日届いたのだった。
手元にある「技術評論社」のロゴ入り書籍小包の封筒の中には、重厚な装丁の本が入っている。
取り出してみると、帯に和紙のような便箋が添えられていた。
どうやらお礼状のようである。
まず、それを開いた。
するとどうだろう。
そこには・・
フワフワとした花の模様が描かれ、その本の著者の青木さん直筆と思しき一言が書かれていたのである。
ちょっとした違いなのだけれど、こういうオシャレかつ丁寧極まりないお礼状をもらったのは初めて。
とても感激したことは言うまでもなかった。
書籍の内容としましては、これからブログを始めようという方に、懇切丁寧な解説と、ちょっとしたコツなどが書かれており、非常に分かりやすいナイスな本となっております。
是非、ご一読くださいませ。
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