やせ我慢の胸元。
先日、所用があって、繁華街を歩いていたときの事である。
3月も初旬だというのに、空は灰色の雲にうっすらと覆われ、そこからやや大きめの雪粒がふりかけられていた。
街ゆく人々もそれぞれに、少しでも体温を逃すまいと分厚い防寒具に身を包んでいる。
それらは冬の空気に溶けて、グレーの塊のようにも見えた。
その時である。
揉まれるように雑踏を歩く私のゆく先から、一組のカップルと思しき2人組みがやってくるのが見えた。
年のころなら20代前半だろうか。
女性の方は、タンクトップの上にジャケット、下は当然のようにミニスカート。
冬場の素肌は「お得」に見えるとはいえ、今日のような天気、気温の場合、痛々しささえ感じてしまう。
それだけならば、「がんばってる女性」というだけの感想だったのだが、
特筆すべきは男性の方であった。
この寒空に、おそらくシャツ一枚にズボンのみ。
しかも、シャツの前面のボタンを必要以上にはずし、決して厚いとは言えない胸板を殊更強調している。
服飾的には実に気合の入ったモノだと思うのだが、なにしろ季節感が著しくズレているような違和感が拭えない。
春を通り越して、初夏を先取りしてしまっているのである。
(一体、あの二人にはどういう事情があるのだろうか・・・。)
と不安にさえなった。
「アンタがそう来るなら、アタシだって。」
「ナニー?俺だって負けねえぞ。」
とばかりに、意地のぶつかり合いから発生した「非防寒合戦」の果ての出来事なのか。
「お前だけに胸元は露出させねえぜ。」
という、男の優しさなのだろうか。
よく見ると、男性の唇は少し青い。
露出した胸板も、赤くなっている。
その中央に揺れている銀色のアクセサリーは、きっと肌に触れるたびに冷たかろう。
しかし、胸を張って、アゴを突き出しねり歩くその様は、
「オレ様ってカッコイイ。」
という自信に満ち溢れていた。
むしろ、
「こんなサミーのに、なんでお前らコートとか着てんの?」
という問いかけすら感じられる。
一瞬、コートにニット帽子、首をマフラーでガッチリガードし、
手先まで手袋をはめ込み、「格好より、防寒」というテーマを掲げる自分が間違っているのか?
という自問にまで至ってしまった。
白い息を吐きながらも、
「寒さより、見た目。」
を体現する彼らに、
「モテるってことは、やせ我慢だぜ。」
というメッセージを見た気がした。
少なくとも、私はそう受け止めた。
しっかと受け止めたのち、
「じゃあ、モテなくていいや。」
とあらためて思ったことは言うまでもない。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
゙;`;:゙;`(;゚;ж;゚; )ブフォォ
うがが、、コーヒーでパソコンがびちょびちょに
投稿: そふぃ1978 | 2005/03/20 12:20
>よく見ると、男性の唇は少し青い。
これってみちゃくちゃかっこ悪いねぇ。
投稿: mariko mam | 2005/03/20 12:23
そこまでじゃなくても、窓から外を観て「今日はコートは・・・・・・いらなそうだな」と判断し、外に出て数歩歩いて敗北を悟る。なんてことはあります。
戻って着替えるなんて絶対したくないから、その日はずっと、痩せ我慢。
投稿: RYO | 2005/03/20 16:09
ピーコが言ってました。
「暑さ、寒さを気にしてたらおしゃれはできないわよ!」って。
でも、「それで体壊したら、着たい服も着れないわよっっ」て言いたい私は、おしゃれさんにはなれないですよね。
投稿: fanshen | 2005/03/21 01:00
う~ん、それも初春ゆえの光景かも知れません。
風物詩とまでは言いませんが…
投稿: ゆう | 2005/03/21 01:11
>そふぃ1978さん
ああ、私もかつて、パソコンをチャーハンまみれにしたことがあります。
> mariko mam さん
でも、「耐えてる感」はなかなかに男前でしたよ。
>RYOさん
「読み違い」はありますね。
でも、あの二人は確信を持っていましたよ…。
>fanshenさん
ええ。
分かります。
私もです…。
>ゆうさん
つまり、頭が春だと?
そこまで言いますか!?
(言ってない)
投稿: 管理人@寿 | 2005/03/21 13:26