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いつもの!

今、私は極秘裏に、ある遠大かつ壮大な計画を進めている。
 
作戦の舞台は、相方と逢う時に、ほぼ毎回立ち寄るカフェレストランである。
 
 
 
このカフェレストランは、私の大のお気に入りスポットである。
その最たる理由は、「紅茶が美味しい。」これに尽きる。

ダージリン、アールグレイ、セイロン、どれをとっても美味しいのだが、自分の味覚には、どうやらアッサムティーが合っているらしく、来店時にはほぼ9割以上、

e-0543

と注文している。
 
 
 
さて、冒頭に申し述べた「計画」であるが、それは別名「エブリ・アッサム作戦(以下E・A・O)」と呼ばれている。

そのカフェレストランに足しげく通い、ほぼ毎回アッサムティーを注文する。
来店した時に、

「あ、アッサムの人、来たよ。クスクス」

と言われれば、この計画は半分成ったも同然である。
 
 
 
あとは、時期を見計らい、

「いつもの。ホット。」

と注文。

ウェイトレスのお姉さんがニコリと微笑み、

「かしこまりました。」

とメニューをさらって厨房へ戻る。
5分後、お盆の上にカチャカチャと、

「いつもの」
カップ&ソーサー、ティーポット、、茶漉しを乗せてやってくる。
ポットの中身は当然、

「いつもの」
アッサムティーだ。
 
 
 
・・・スマート!
あまりにスマート!

スマーテスト!!!(スマートの最上級と思われる。)

「いつもの。」
で通じる店を持つという事は、男児の永遠の夢と言ってよい。
 
その店を、毎週せっせと通ってはせっせとアッサムティーを注文し、ウェイトレスのお姉さんの心証をよくすべく笑顔をふりまき、開拓に勤しんでいる。

これが、今、私が極秘裏に推し進めている

「E・A・O」

のあらましである。

計画は、開始から約半年が経っている。

すっかりその店でも常連となり、店員さんとは知り合いとまでは行かなくとも「顔見知り」くらいにまでは関係が発展している。

私が約9割強の確率でアッサムティーを注文するということも、おそらく従業員のほとんどに浸透していているのではないか。

「いつもの。」

が通用するのではないか。
許されるのではないか。

私は息を潜めてその時を、その機を窺っていたのである。
 
 
 
先日のこと。

私は、相方と連れ立って、いつものように件(くだん)のカフェレストランに足を運んだ。
店内は、いつものように混み合い、席の3分の2が埋まっている。

「あ、いらっしゃいませ~!」

入り口で出方を待つ我々に駆け寄ってくるウェイトレスのお姉さんは、いつもの人だ。

茶色く、よくウェーブのかかった髪を両サイドで結び、丸顔をさらにクシャリと丸くして、満面で笑うステキな女性である。

話しをする時に、少しだけ肩をすぼめて、アゴを相手に近づける仕草が可愛い。

(うんうん。エエなあ~・・。)

私は一人、納得のうなづきを弾ませながら、席に座った。

ほどなく、メニューと水が運ばれてくる。

私はメニューなど見るまでもなく、アッサムティー。
相方も注文が決まったようだ。

メニューを閉じて頬杖をつきながらいつものように

「振り向いて光線」

を発射。

それは正しくウェイトレスのお姉さんに受け入れられた。

「ご注文お決まりですか?」

クシャリと微笑むお姉さん。

「あ、はい。それじゃあ・・」

注文をする相方。
私は、ひそかに決意を固めていた。

(今日こそ、「いつもの。」と言ってみよう。)

このお姉さんならば、きっと分かってくれるに違いない。
「いつもの」はアッサムなんだと、気づいてくれるに違いないのだ。

手には汗がにじみ、鼓動が早まる。

緊張が涸らしたノドに、コップの冷水を撒き、その時を待った。

相方の注文が終わる。
お姉さんはこちらを向いた。

(こちらは何にされますか?)

と、目で語っている。

私は意を決して口を開いた。
告白するのだ。

「いつもの。」

と!!!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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怖気づいたわけではない。

怖気づいたわけではないのだ。

ただ、その、アレだ。
もし、気づかれなかった時に困るのは私ではなくてウェイトレスさんであるし、もしも何かの勘違いで、

「いつもの」

で、一度も注文したことの無いチーズフォンデュなど持って来られても途方に暮れてしまうので、「E・A・O」は今回は時期尚早につき次回以降に持ち越しという英断をくだしたのだ。
 
 
 
 
例えばスタンプカード。

いくつスタンプを溜めると、割引などというサービスは要らないので、

「同じものを注文するごとにスタンプをひとつ押し、30個溜まったら『いつもの』で発注可能」
とかいうハッキリした基準を決めて欲しいと切に思う今日この頃である。

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コメント

masamicです。

E.A.O. (エブリ・アッサム作戦)

おしい!

略語が「T.E.A.」だったらGJだった!

ex.) Tactical-operation of Every Assam-tea

とかw。

投稿: masamic | 2005/03/13 22:20

イラストの相方さんの表情が、
怖気づいた寿さんに感づいたように
見えるのは私だけでしょうか?

投稿: そふぃ1978 | 2005/03/13 23:54

なんかGJな店員さんにえらく力が入ってるのは気のせいでしょうか。いや、気のせいじゃない。

にしてもお冷て…アイスじゃない時点で
不自然ですよ(汗)

投稿: ゆう | 2005/03/14 00:32

「いつもの」
これは私もずっと憧れで、週1でバーに通いつめてたことがあります。カウンターに座って、注文するまでちょっと黙っていたらマスターから
「いつものでいい?」
と訊かれ、心の中で「ぃやったあぁぁぁ」とヤッホイヤッホイ踊ってましたよ。
これで私もオトナの仲間入りだぁと・・・・・・。

投稿: RYO | 2005/03/14 01:52

むふふ。

「いつもの。」

で通じるお店をいくつか持っている僕から、とっておきの方法をお教え致しましょうw

まず、1つのお店に数回通います。
そして、そろそろ顔を覚えてもらったかな、くらいのウエイトレス(ウエイターでもよい)さんができたら、こう言うのです。

「…うーん、僕、いつも何頼んでましたっけ???」

この時にウエイトレスさんが特定のメニューを答えてくれれば、作戦成功です。
以降は、

「いつもの。」

で通じます。

ちなみにこの方法は、僕がカフェレストランで働いていたときに、本当にお客さんからこう言われることが多かったという実体験に基づいていますので、成功率は非常に高いと思います。

投稿: たろー | 2005/03/14 04:23

追加ですが、僕がいきつけのバーで、マスターに、

「たろー、いつものでいい?」

と言われ、出てくる品は、

「アーリータイムスのロック&大き目のグラスに入ったチェイサー」

なのですが、時々

「クアーズ」(ビール)

が出てきたりします。
こういう場合の

「いつもの。」

には、

「おまかせ。」

のニュアンスも含まれているので、こういう事態も起こり得ます。

…マア、僕はどっちも好きなんで、喜んで飲みますけどもw

投稿: たろー | 2005/03/14 04:29

…追加の追加、許してくださいw

僕が働いていたカフェレストランの常連で、

「…うーん、僕、いつも何頼んでたかなぁ???」

と最初に言われたのは、故・中島らもさんだったです。
中島らもさんは、僕が働いていたカフェの常連さんでした。

よく、何かを執筆されておられましたですよ。

投稿: たろー | 2005/03/14 04:37

>masamicさん
>略語が「T.E.A.」だったらGJだった!
ex.) Tactical-operation of Every Assam-teaとかw。

ああ~!
それが良かった~!

思いつかなかった~!

チクショー!!!

masamicさん、ナイス!!

あ~!チクショー!!

>そふぃ1978 さん
相方は、大抵なんでも気づいています。
怖いネ…。

>ゆうさん
基本的に、女性を描くときは気合が入ります。
何故なら、私は女性を描くのが好きだからです。

きれいだから。

>RYO さん
いいないいな!
「いつものヤッホイ!」

いつものヤッホイ!!

ヤッホイ!!!

>たろーさん
>「…うーん、僕、いつも何頼んでましたっけ???」

あああああ~!
なるほど、そういう手がありましたね!

さすがですねえ~…。

「さあ?」

と返されると、多分、立ち直れそうにありませんが…。

>僕が働いていたカフェレストランの常連で、
「…うーん、僕、いつも何頼んでたかなぁ???」と最初に言われたのは、故・中島らもさんだったです。

うわあ~…。
いいなあ~…。
スゴイ縁ですね。

あの魔法のような文章を生み出す現場に居合わせたというのは、大変な財産ですね。

中島らもさんの「いつもの」は何だったのですか?

投稿: 寿@管理人 | 2005/03/14 10:22

>あの魔法のような文章を生み出す現場に居合わせたというのは、大変な財産ですね。

それがですね、当時はらもさんのことを、あんまりよく知らなかったもんで…w
他の店員らが、「あの人はすごい人やねんで」と言っているのは聞いていましたが、僕からすれば、

「季節に関係なく麦わら帽子をかぶって入ってくる、変なオッサン」

くらいの認識しかありませんでした。
あとから、らも氏の著作を読んで、サインとか貰っときゃよかったかなぁ、などと反省しています。

>中島らもさんの「いつもの」は何だったのですか?

絶対聞かれるとは思ったんですが…w

なにぶん10年近く前の話であることと、そのカフェでよく「執筆」されていた方々に、ひさうちみちおさん(漫画家)、新野新さん(放送作家)、内藤裕敬さん(南河内万歳一座座長)などがおられまして…、誰が何を「いつも」飲んでいたのか…、上記のうちの誰かが「ウインナーコーヒー」だったのは間違いないんですが…。

でもたぶん、というかたしか、らもさんはごくフツーの、

「ホットコーヒー」

だったと思います。

投稿: たろー | 2005/03/14 11:39

いつもの、は少女の夢でもあります。

投稿: るるが | 2005/03/14 15:47

私の場合、常連の店は席に座ると、注文を聞かずに「いつもの」奴を持ってきます。
寿司屋なら「コハダ」、茶店ならダージリン、コーヒー屋ならブラジルサントスNo.2って具合に…
気に入った店を見つけたなら、積極的に話しかけることが大切なんじゃないですかね。「これおいしいね」とか「今日のはおいしくなかった」とか…私はおいしくない時はおいしくないってはっきり言います。そうすると次回から他の人より気を遣って入れてくれるみたいですよ(^^;
そんな事を続けているとあっちの方から「今日は○△※でいいですか?」とか「今日は良いものが入りましたよ」って言ってきてくれます。
そう言う手順を踏まなくても、笑顔で「いつもの」って言ったら、相手が「は?」と言う時にごまかしやすいですよん(^^;

投稿: lunatic | 2005/03/14 16:14

こんばんは。
お客さんの立場で、「いつもの」って頼むのって、本当に勇気がいりますよね。(飲食サービスが長いのでよく分かります。)

サービスする側としては、お客さんが
1…入店時に10割それを頼む
2…週に何度かは来る
3…軽い世間話が出来る
ここまで来ると、逆にお店側から「いつものでいいですか?」と聞けます。

今の職場でも、1と2をクリアしている常連さんがいますが3がなく、「いつものでいいですか?」と聞けない場合も多いです。
これ、お客様の印象が薄いのではなく、「注文は毎回メニュー名を直接言いたい」というスタイルも受け入れるための「空白部分」みたいなものです。

「メニュー名を発声し、お金を出せば、希望の飲み物が受け取れる」という機械的な扱いを望むお客さまが一部にいることも否定できません。

サービスは、人と人とのコミュニケーション。軽い会話を交えることで「いつものでいいですか?」へ繋がると思います。
「今日はお店、混んでますね」
「ようやく春らしくなってきましたね」

E・A・Oの成功を祈ります♪

投稿: プラト | 2005/03/15 00:58

>たろーさん
おわあ・・。
一体、どういう喫茶店だったのでしょうか…。

うらやましいですねえ。

モノを書いている現場というのは、なかなかお目にかかれないものですから、サインなど無くっても、記憶だけで十分だと思いますよ。

まあ、ちょっともったいないなとは思いますけれどね。(笑)

>るるがさん
いや、少女にはまだ早い。(断言)

>lunaticさん
では、笑顔で
「いつものアッサムティーをお願いいたします。」

と注文し、結局いつもより長い注文になっていてギャフン。

>プラトさん
軽い世間話!!
これは重要ですね。

そのお店は、食べ終わった後などに、

「今日の●●●はどうでしたか?」

とか聞いてくれるんですよ。

そこで印象に残る受け答えをしておけば、「いつもの」ミッションコンプリートに繋がるという事なのですね。

ようし、じゃあ、今度は何か一発芸を仕込んで行こう!!(バカ)

貴重なお店側からの意見、ありがとうございました~。

投稿: 寿@管理人 | 2005/03/15 17:07

>一体、どういう喫茶店だったのでしょうか…。

らもさんのエッセイにも登場しますが、大阪の扇町というところに、

「扇町ミュージアムスクエア」

という、「映画館」「小劇場」「雑貨屋」などがごちゃまぜになった建物が、少し前までありました。(現在は閉鎖)

僕が働いていたカフェは、その中にあったのです。

しかも、当時は近所に「関西テレビ」もあったので、著名な方々がよく来られました。
(「正道会館」本部も近所でしたし、「扇町ミュージアムスクエア」の2階は「ぴあ(関西版)」の編集部、3階以上は「劇団☆新感線 」の事務所&稽古場だったりしたので、有名人が本当によく来られるカフェでした)

たぶん、らもさんがよく来られたのは、「小劇場」の絡みだったのだろうと思います。

投稿: たろー | 2005/03/17 11:26

へえ~!

すごいなあ。
華やかな立地ですねえ。

著名な人というのは、不思議なオーラを持っていますよね。

緊張感というか。

そういったものをたくさん感じられたという経験は、得がたいものだと思います。

すげえ~…。

投稿: 寿@管理人 | 2005/03/18 12:16

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