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荒地に咲く花

ガソリンスタンドに立ち寄った際。

思いがけず妙齢の女性店員に出会うと、とても得をした気分になってしまう。

何故ならば、ガソリンスタンドの女性店員(妙齢)は、グッジョブ的要素満載の存在だからである。
 
 
 
そもそもガソリンスタンドというものは、極めて不穏な空間である。

油と鉄とゴムが視界を阻み、危険物に囲まれているという緊張感が常にまとわりつき、脳に直接響くガソリンの臭気が無骨で無機質な雰囲気を突きつけてやまない。

考えることも、良からぬ方向に進みがちになる。
基本的に前進のまま通り抜ける施設なのに、気持ちは後ろ向きになってしまうのだ。
 
 
 
ある日のこと。

私は車のガソリン残量がわずかであることにいよいよ観念し、とぼとぼと行きつけのガソリンスタンドに入った。
それに気づいて、事務所から飛び出しつつ

「いらっしゃいませーーーー!!」

と叫び、駆け寄ってきたのは、妙齢の女性店員だったのである。
私はどんなにか救われた気持ちになった。

白と黒を基調としたグラデーションで構成されていた風景が、その女性店員の周りだけわずかな彩りを取り戻していた。

ガソリンスタンドの女性店員は、声が大きい。
女性の声というのは、大きいと艶を増す気がする。

車を止めて、運転席の窓を開けると、そこに駆け寄り先ほどよりも幾分小さな声で

「いらっしゃいませ!」

と言ってくれる。

先ほどの大きな「いらっしゃいませ」は公的なもので、今の「いらっしゃいませ」は、私だけに向けられているのだなあ・・と思うと、一歩踏み込んだ関係になったような気がして、別の意味で緊張が走り、色めき立った空気を感じてしまう。

そして、それはすぐに勘違いだと気づく。
 
 
 
油種、数量を発注すると、女性店員は一度先ほどの「個人用声量」でもって確認し、離れ際店内に響く声(公的声)でもって油種、数量を発表する。

「個人的声量」のところが、言外に

(じゃあ、あたし行くけど、すぐ戻ってくるからちょっと待っててね。)

という、「ナイショ話的雰囲気」が感じられ、そこでまた色めきだってしまう。

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そして、それはすぐに勘違いだと気づく。

ガソリンスタンドの女性店員の魅力のひとつは、この「声量大小使い分け」にあると言って良い。
 
 
 
ガソリンを注入している間、女性店員は実に甲斐甲斐しくクルマの世話を焼いてくれる。
男物と思しき、大き目のツナギを着てコロコロとよく走りながら、窓を拭いたり、灰皿を交換したり、ゴミを受け取ったり。

あまりに至れり尽くせりなので、こちらが恐縮してしまう。
冬場などは、幾分暖かい車内にいる自分が申し訳なくなり、居たたまれなくなる。

「車内をお拭きくださ~い!」

と、渡されたタオルが半分凍って硬くなっていたりすると、

「ああ・・!お疲れ様です・・・!」

と涙ぐみ、手を取り、さすってやりたい衝動に駆られてしまう。
実際にやったら、確実にドン引きされるのでやりませんが。
 
ガソリンスタンドの女性店員の魅力のひとつは、この「恐縮するほど甲斐甲斐しい」ところにあると言って良い。
 
 
 
そして、給油を終えて代金を払う。
女性店員は、サービスを終えた充実感と安堵感で相好を崩した。
寒さで赤くなった頬と鼻先に囲まれて、ニカッと白い歯が光っている。

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その顔がまた良い。

現金受け渡しの際、油にまみれ、黒く染まった指先に目が行き、少し胸が詰まる。
おつりを受け取るこちらの手の方が女性の手のように白い。

なんだか申し訳ないような気持ちになる。
しかし、そんなことはお構いナシに、元気良く前屈しながら

「ありがとうございましたーーー!!!」

と送り出してくれる姿に、私は感動すら覚えるのであった。
 
 
 
ガソリンスタンドの女性店員はグッジョブである。

メリハリの利いた艶があり、働き者で甲斐甲斐しく、勇ましい。
困難な場所に根を下ろし、懸命に咲く可憐な花のような風情がある。

たった一回の給油で、もう、他人ではなくなったような気さえしてくる。

未練だろうか。
少し振り返ると、

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早くも男性店員と談笑している。

尽くしてその気にさせといて、キッチリ突き放す。
そのビジネスライクな潔さも・・・また良い。

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コメント

グッジョブな話を見ていていつも思いますが、寿さんは本当に女性の魅力を見いだすのがうまいですね。直接見て何とも思わなかった子でも、寿さんの文章を通して見ると惚れてしまいそうな気がします。
あんなイイ相方さんを見つけたのも、その眼力あってだったのでしょうか。さすがです。

投稿: うみんちゅ | 2005/03/01 12:53

男性店員も女性店員もあの甲斐甲斐しさは同じなのに、なぜか女性店員は健気さというかひたむきさをより強く感じてしまう。男性的な職場の空気とのミスマッチが、より引き立たせるのかしら。
男性店員の場合は「元気いいなー」くらいにしか感じないもんなー。

投稿: RYO | 2005/03/01 13:00

学生時代を思い出しました。
元SSマンだった私。
いやーでもいい修行でした。
おかげで車のトラブルは全部
自分で対処できるし。。。。
車幅感覚は養われるので、
縁石に乗り上げるなんて
「絶対」しないし・・・・
「絶対」しないし・・・・
「絶対」しないし・・・・

それにしても1枚目の絵
エロ過ぎです。

投稿: そふぃ1978 | 2005/03/01 13:39

油で汚れたつなぎと女性っていう、アンバランスさっていいですよね。
個人的には、ショートパンツの女性店員も好きですよ。
ちなみに、僕の行きつけのスタンドは、ちょっとヤンキー風の男性店員ばかりで、女性がいない・・・

投稿: 結城コウジ | 2005/03/01 22:03

出されたタオルで顔とか脇の下とか拭いとらんだろな。

投稿: ブログ警察 | 2005/03/02 00:14

う~ん、相変わらずグッジョブな画です。
ほとんど原付でしか訪ねることがないので、
あまりありがたみは感じませんでした。
ルーズソックスの方が多いのも原因かも
しれません。寒いのはわかるんですが…

投稿: ゆう | 2005/03/02 00:49

がはは!
おもろすぎっすよ。
男の中の、ほんとに男。
このすけべ!(じゃないか。)

投稿: mariko mam | 2005/03/02 01:16

>うみんちゅさん
いやいや、女性を眺めるのが好きなだけです。
私は女性に憧れを持ってますので(幻想とも言いますが)、どうしても描きたくなっちゃうんですよねえ。

イラストに、野郎が少ないのもそのせいです。

> RYOさん
そうそう。
野郎・・もとい、男性店員は、元気が良くてアタリマエ・・と言った感じがあります。

その場の雰囲気に合っているからでしょうか。
ミスマッチが、健気さを生みます。

> そふぃ1978さん
ふっ・・。
「絶対にしない」
と、私も思っておりましたよ。
こないだまではね。

でも、やる時はやるのです。

ほら、もうあなたの目の前に縁石が・・!

>結城コウジさん
夏場のショートパンツもいいんですけどね。
やはり、スタンドの女性店員は、冬場に真価が発揮されるような気がします。

>ブログ警察さん
あ、なんか言いました?
(股間を拭きあげながら)

>ゆうさん
ああ!
そういえば、スタンドの女性店員さんって、妙にルーズソックスが多いですよね!

なんでなんだろう?
寒いからですか?

> mariko mam さん
てへ!

投稿: 寿@管理人 | 2005/03/02 18:46

ぬぅ…
寿さんに問題です。
【RMG】ってなんだか分かりますか?


【レギュラー満タン現金で】らしいです!
ガソリンスタンドで見かけるのは若いお兄さんです♪
お姉さんだとぐっじょぶなんですねー。

投稿: るるが | 2005/03/02 18:50

ぐわぁ!ぶつけた!

投稿: そふぃ1978 | 2005/03/02 19:38

>るるが さん
>【RMG】ってなんだか分かりますか?

「レギュラーまあまあ頑張ってる」。

ドゥドゥビドゥビドゥバ
ハイ!ハイ!ハイハイハイ!

あるある探検隊!
あるある探検隊!

>そふぃ1978さん
(ザマミロ・・)

投稿: 寿@管理人 | 2005/03/03 09:30

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