女泣かせ
今日は、私が2人の女性と関係し、一人を泣かせてしまった出来事を書きたいと思います。
それは、私と相方(恋人)がよく立ち寄るお店でのこと。
レストランと喫茶店を兼ねたそのお店は、入り口付近で自家製造したパンも売っており、そのパンがどれも大変美味しく、特にラスク(パンをカリカリにして甘く味付けしたもの)は絶品なのだ。
我々は、いつものようにお茶を楽しんだ後、フラフラとそのパン売り場へ吸い込まれていった。
もちろん、ラスクを購入するためである。
二人でラスクの入ったビンを探す。
しかし、今日はどこにもそれが見当たらなかった。
「トシさん、今日は無いみたいだよ。」
「んだねえ。一応、聞いてみようか。」
ということで、傍らのレジに佇んでいた、顔なじみの店員さんに尋ねる。
「すみません、今日はラスク無いんスか?」
店員さんは、レジ台から転げ出るように飛び出してきた。
この店員さんはひときわ小柄な女性で、丸顔にニコニコと微笑を絶やすことなく、頭にはいつもグレーに幾何学模様を白抜きしたバンダナを巻き、厨房着の袖を小粋にまくって、長めの前掛けを大股でパタパタと鳴らしながら働いている。
丸顔の可愛い店員さんはこれ以上ないほど困った顔で言った。
「あ~・・!ごめんなさい!今日、ラスク切れちゃったんですよお~!」
ああ、そうか、無くなってしまったのか。
まあ、あれだけ美味しいと、無くなるのもうなづける。
「あ!そうなんですか。分かりました、じゃあまた来てみます。」
と相方が言うと、丸顔の店員さんはなんと、涙ぐみはじめてしまったではないか。
思わず顔を見合わせ、焦る私と相方。
「ごめんなさ~い・・!」
謝りつづける店員さん。
「いやいやいや、別にいいんです。また近いうちに来ますから!」
「そうそう、ねえ?また数日後に・・。」
「ありがとうございます・・今日、パン粉ならあるんですけど・・」
再び、顔を見合わせる私と相方。
(パン粉って・・揚げ物するわけでないのにそんなんもらっても・・)
しかし、丸顔の店員さんは、相変わらず涙ぐんでいる。
困惑する我々。
事態はいよいよ混迷の度合いを深め始めた。
私は、なんとかせねばならんと思い、
「あ、ホラ、サチ。キミ、たしかパン粉好きだろ?買って食べたら?『マフマフ・・バフー!!』って。」
と相方に言った。
「パン粉はさすがに食べないよ・・っていうか、バカにしてんの!?アンタ!」
怒る相方。
涙ぐむ女性の前で怒る女性と焦る男。
知らない人が見れば、痴話ゲンカと見えなくもない。
(見えないか)
しかし、我々のやりとりを見ていた店員さんがようやく笑った。
そこに突破口を見出し、互いに「今だ!」と目配せして
「あはははは。じゃあ、また来ますね。」
と、言い残して我々はそそくさと店を出る我々。
初冬の夜空。
白い雲の間にまたたく星ぼしを見上げながら、白い息と一緒に呟いた。
「なにも、泣く事はないよなあ・・。」
「うん。まさか、ラスクであんな事になるとは思わなかったよ・・。」
この事があってからというもの、我々はこの店において「ラスクの常連さん」として認知されたらしく、立ち寄って食事したりお茶を飲んだりするたびに「今日のラスク状況」についての報告を逐一受けている。
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コメント
ラスク、美味しいですね、ラスク。あのカリカリ感と程よい甘さが。類似品にガーリックラスクなんてのもあるけど、「めし」っぽくてまったく別物に感じてしまう。
店員で思い出したのは、発注ミスでビールを切らしたレストラン・バーの女性店員。その後、行く度にその店員に「今日のビール入荷状況」を聞いてたなぁ。ちなみに、その店員さんの名刺の役職欄は「したっぱ」になっていました。泡が「立つ」状態に入れてくれるブラウマイスターが売りの店なので、さぞ決まり悪かったでしょうに・・・。毎回聞いてゴメンナサイ。また聞きます。
投稿: テツヤ | 2004/12/16 12:55
>我々はこの店において「ラスクの常連さん」として認知されたらしく
少々、こっぱずかしいでしょ?!
でも、相方さんと一緒で何よりでした~。
私も子供のようにラスク好きです~。
投稿: mariko mam | 2004/12/16 15:26
[2人の女性と関係し、一人を泣かせてしまった]だとぉぉぉお!
許せんっ!!
逮捕するうぅぅうぅ!!!
投稿: ブログ警察 | 2004/12/16 16:41
ラスクのお姉さん、とっても美人ですね♪
ラスクの常連さん、良いですね、そんちょさん常連さんじゃないですかー。
いきなり涙ぐまれると、びっくりですね…;
最初、【二人の女性と関係し、一人を泣かせてしまった】とか見たら……
「嘘嘘!!そんちょさんが相方さんを差し置いて、他の女性を……、そして相方さんが、泣くなんて…」
とか、思いました。想像って、素晴らしいですね。
結局誤解でした。ではではー
投稿: るるが | 2004/12/16 19:53
あ~あ、泣かしちゃった(笑)
あえて得意の枕詞である「妙齢」を
つけなかった点がやや気になりましたが。
まぁそそんちょさんの行く先々に妙齢の女性が
いるのも不公平(?)ですけどね。
投稿: ゆう | 2004/12/16 21:34
お店の方が自分を覚えていてくれるってうれしいですよね。
行きつけの中華料理屋(といってもラーメン屋ですが)で「炒めそば」と「レバニラ定食」をよくオーダーするのですが。
ある日「今日はどっちにするの?ご飯終わっちゃったよ」と。
いや、それじゃ選択肢1つしかないし・・・
じゃなくて、それ以外のメニューもオススメしてくださいヽ(;´Д`)ノ
投稿: はせ | 2004/12/17 09:57
>テツヤさん
あー・・また聞いちゃうか。
そこまで行くと、もはやプレイですな。
>mariko mamさん
ラスク大好きなんですよねえ。
ある限り食べちゃいます。
口の中がザギザギに切れても。
>ブログ警察さん
逮捕されたくねえぇぇぇぇぇぇぇ!!!!
(そのまんま)
>るるがさん
私も大人ですから、そりゃあ過去に色々・・あ、ねえや。(笑)
>ゆうさん
「妙齢」の女性を遠くから眺めるのが好きなのです。
ある意味、まったく危害を加えないストーカーみたいなものなのかも知れません・・。
>はせさん
嬉しいですねえ。
絶対、はせさんその店の人に
「炒め・レバニラさん」とか呼ばれてますよ。
今度、「私のことなんて呼んでいるんですかあ!?」と聞いてみて、不審がられるのも面白いかも知れませんね。
(面白いものか)
投稿: そんちょ | 2004/12/17 14:09