術中八苦(じゅっちゅうはっく)
我が家で、両親が親しい仲間を集めて開いた食事会に相方(彼女)と共に参加した。
集まったメンバーは、いつものごくごく身内で、姉夫婦、土建屋の部長夫妻、精肉店の社長、造園会社の社長夫妻、バレエの先生夫妻、そのお弟子さんと、実にバラエティに富んだ取り合わせであった。
オッチャンたちはオッチャンたちで盛り上がっていたので、私と相方は姉夫婦と、バレエのお弟子さん(女性:19歳以後Mさんとする)のいるテーブルに座った。
談笑しながら食事をしていると、Mさんが話しかけて来たのである。
「トシさん!トシさんと彼女さんって、スゴク仲良いですよね!見てて羨ましいです~。なんか、仲良くできる秘訣とかあるんですか?」
モシモシ噛んでいたおでんを急いで飲み込み、卵がノドにつっかえたのをジュースで流した。
「ん~?そう?そんなに仲良く見える?秘訣かあ。秘訣ってなんだろうね?サチ。」
すっかり気を良くし、ニコニコしながらチラリと相方を見ると・・
アッサリと切り捨てられた。
「・・・」
相方の顔を凝視したまま固まる私。
「ウソだって。ウソ。」
ニコリと笑う相方。
Mさんは笑って、
「お二人は、週何回くらい逢ってるんですか?」
と重ねて聞いてきた。
「まあ、大体2~3日に一回くらいだよ。」
私はなんとか立ち直り、答えた。
「ねえ?」
と、再び相方の方を向く。
すると相方は
「え!?そうなの!?」
蒼ざめる私。
「冗談だよ、冗談。」
ニコリと笑う相方。
「・・・」
眉間に不満を漂わせながらも、なんとか踏み止まった。
話は、我々の出逢いの話になった。
「俺らはね、中学3年の時の同級生だったんだよ。」
私がそう話すと、Mさんは「運命的ですね~!」と感動してくれた。
「な!」
今度こそなにか、いい話の一つも頼むよ・・という哀願(目だけに)にも似た視線を相方に向ける。
相方は、その視線をしっかりと受け止め、それを踏まえた上で
と言い放ちやがった。
私もさすがにムカリ心を押さえきれず、
「まあ、所詮キミの愛情はそんなモンなんだよな。」
と言ってしまったのである。
すると、相方はすかさずMさんに向かって
「ほらねー。この話すると、すぐにこういう事言うんだよ。コイツは。ヒドイやろー?」
「トシさん、ヒドイです!」
重ねるMさん。
そこへ待ってましたとばかりに姉も参戦し、
「トシはね、そういうヤツよ。こないだもさー・・」
三門の口腔砲台から次々に繰り出される罵詈雑言の嵐。
もともと、その前のやり取りがキッカケで、私の心は深く傷ついていたというのに、少しの反撃を試みたがために(その反撃方法がマズかったのだが)集中砲火を浴びる結果を招いてしまったのである。
私は半泣きになりながら、その猛攻に耐えつづけていた。
それを見かねた相方が、
「分かった分かった。あたしが悪かったよ。ほれ、泣くな。」
と、手を差し伸べてくれたのだった。
まさに、マッチポンプ的手法である。
モラルハザードと呼んでもおかしくないほどの、悪質な手口である。
しかし私は、なにか釈然としないものを感じながらも、まんまと術中にはまり、つい、いつものクセで相方の二の腕にすがりついていた。
「女3人寄れば姦しい」というより、
「女3人寄れば恐ろしい」と思い知らされた事は言うまでもない。
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コメント
こんばんは、書籍へのノミネートおめでとうございます。
──ですが今回の記事は「日常の話」というよりは「相方さんの話」じゃないですか(笑)。
お二人の話を読む度、良い女性というのはそれこそ本文中でそんちょさんが仰っている「釈然としない事」を納得させる人の気がしてきます。
逆に女性の方から見た「良い女性」ってどんな人なんでしょうね。一度相方さんに聞いてみては?
投稿: 303E | 2004/11/30 00:01
すっげかいつまんで書かれるとひでえ女だ(笑
でもさ~
ちょいと脚色多いんでねえのかなあ~
自分で言うのもなんだけど
ちょっとはいい話したと思うんだけどなあ~
書きにくいだろうけどさ~
ぶつぶつ…
投稿: 相方 | 2004/11/30 00:04
かいつまみすぎなのか、脚色が多いのかは
わかりませんが(両方なら当時の原形を
とどめていないことになるな)、
なんというか…おつかれさまでした(笑)
投稿: ゆう | 2004/11/30 00:28
なんとも「仲睦ましい」と云うより
「仲ムツカシイ」ですなぁ。
そんちょさんの心中お察し致します。
(備考)女3人でカシマシイ。
男3人ならイヤラシイ。…ン?
投稿: はぁちゃん | 2004/11/30 00:44
いやいや、相方さん、全然「ひでえ女」じゃないですよ。素敵です。
おまけに最後はちゃんと慰めてるじゃないですか。「いい女」だなあ~うらやましいなあ~
投稿: Reiko Kato | 2004/11/30 04:03
その一言が、術中発句って感じですね。
しかし、二の腕はいい。あのプニプニ感が。
結局、脚色なのかかいつまんでるのか、私にはよくわかりませんが、どうせ脚色なら、土建屋社長が厠へ立った5分後に、断末魔が聞こえて、駆けつけてみるとそこにダイイングメッセージが・・・って展開に・・・すみません。
まぁ、脚色もかいつまみもそんちょさんの文章力。その文章力がノミネートに繋がったわけで。20日、楽しみにしてます。
投稿: テツヤ | 2004/11/30 08:59
なかなか楽しくて「有意義な」席だと思ったのに、わが弟はそのように取っていたとは・・・・未熟な男よ、わははは!
「相方」ちゃん、楽しかったね~また飲もうね~!続きのお話も・・・・・なんだかそんちょの部屋のほうから殺気が・・・・(笑)
投稿: 編み助 | 2004/11/30 09:33
相方さん、格好良いです♪実は、ファンです。
凄いです。
そんちょさんも、格好良いです♪
…わたしがこんな事言っても全然凄くないですねー
お二人とも、仲が良くて凄く羨ましいですっ
うんうん。
ではでは、とても幸せそうな(?)記事でした、どうもですー
投稿: るるが | 2004/11/30 20:03
>303Eさん
相方は、私なんかにゃもったいないほどのイイ女ですよ。
・・ちょっと怖いのが玉にキズですが・・(ボソリ)。
>相方
そうかあ~?
しっかり落とされまくったような気がすっけど。
ごめんね。
>ゆうさん
いや、基本的に「あった事」を書いてるんですけどねえ・・。
コソコソ・・。
>はぁちゃんさん
ムツカシイッスねえ~。(笑)
いや、ホント。
>Reiko Katoさん
はい。
まさに「ムチとローソク」・・じゃなかった「アメとムチ」ですな。
>テツヤさん
「術中発句」・・ああ~!
その方が良かったなあ!
遅かった!
ナイスセンス!
> 編み助
うっせー。
>るるがさん
そうかなあ~。
そんなにカッコイイかなあ~。
もっと言って。
投稿: そんちょ | 2004/12/01 16:30
↑の「ごめんね。」っていうそんちょサンの相方サンへの一言がいいですね。
なんか、円満の秘訣というかそんちょサンの人柄というか、垣間見た気がしました。
投稿: テツヤ | 2004/12/01 19:18
いえ・・
早く謝らないと大変なことに・・。
(なんつって)
投稿: そんちょ | 2004/12/02 23:17