少し残った女の部分
街の喧騒がその色合いを変え始める夜7時。
私と相方(彼女)は喫茶店でお茶を飲んでいた。
小さなテーブルに向かい合い、他愛も無い話を交わしているうちに、ふとクリスマスの話題がテーブルにのぼった。
「そういや、もうすぐクリスマスだよ。はえーなー。」
私はストレートティーをソーサーに戻しながら、クリスマスに思いを馳せていた。
「そうだねえ~・・クリスマス。もう来月かあ。」
相方は少し猫背になりながら、ブラックコーヒーを一口飲む。
「クリスマスといえば、プレゼントだなあ。プレゼントは、『広辞苑』でどうだべ?」
と聞いた。
何気なくの、極めて思いつきである。
相方は、思わず吹き出しそうになったコーヒーをソーサーに戻した。
「カチャリ」という磁器の当たる音が少し高めに響く。
「あはは!いやあ~。『広辞苑』ねえ・・。」
「あれ?欲しがってなかったっけ?『広辞苑』。」
「うん。もちろん欲しいけどね。なんつーか、私の『女の部分』がね。『それはどうなんだ?』とね。」
「『女の部分』が。」
「そう。少しだけ残された『女の部分』が。」
ああ、そうか。
確かに、クリスマスプレゼントで『広辞苑』というのは、あまりに色気が無いような気がする。
単純に「欲しいものをあげればいい」というわけではないのだ。
私は少し反省すると同時に、「色気」という私にもっとも縁遠いものを求められ、拱手瞑目、少しだけ途方に暮れていた。
その様子を見ていた相方が、こう言った。
「まあ、アレだよ。『広辞苑』よりも、『擬態語辞典』の方がいいな。」
おそらく、途方に暮れる私を見た相方が気を使ったのだろうが、『広辞苑』よりも、『擬態語辞典』の方がやや色気があるという事は、ある意味間違いは無い。
なにしろ、『擬態語辞典』の方には「いちゃいちゃ」という擬態語の意味が丁寧にイラスト付きで記述されているからだ。
・・無論、冗談であるが、
とにかく、相方の喜ぶものが贈りたくて仕方が無い今日この頃である。
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コメント
類似品で『現代用語の基礎知識』(だったかな?)
なんてのもありますが、もちろん色気なんざありません。
私も色気とは絶縁したに等しいのでなんとも…
困ったものです。
投稿: ゆう | 2004/11/18 00:52
まぁ、でも「模範六法」なんかよりは色気あるのでは?
同じ「広辞苑」を贈るにしても、押し花のしおりでも作って、「愛」とか「好き」とかのページに挟んでおくとか。「相方」のページには、脚注で、相方の名前を書いておく、なんてのも面白いかも。気付いてもらえず寂しい思いをする可能性大。
う~ん、オレがあげたのは、去年は「ハンドマッサージ機」だった気がする。しかも、ヨド●シカメラの包みで。
投稿: テツヤ | 2004/11/18 08:51
うーん、なんかいつでも持ち歩けるものが良いんじゃないですかねえ。
投稿: おおたま | 2004/11/18 10:06
実用品+心のこもった手書きの手紙。
これ、記念日のプレゼントとしては、最強。間違いない。
出会ったばかりのころは、プレゼントしたいもので選択肢があふれているんだけど、ある程度プレゼント場をこなすと、段々と目新しさが無くなって来ちゃうんですよね。
だからこそ、手書きの手紙を行ってみては?
僕も、今年のクリスマス兼結婚記念日は、手書きで手紙を書く予定です。
投稿: kata | 2004/11/18 12:01
>ゆうさん
ハイ。
他にも、「名前の由来事典」とか、「方言事典」、「日中事典」なんかにも食指が動きます。
なんとも困ったものです。
> テツヤさん
いいッスね。
あの分厚いカバーに、「アイラブユー」とか書いて贈りますか。
まあ、間違いなく
「カバーにラクガキしない!」
と怒られますが。
> おおたまさん
っつーことは、アレっすか。
仙台箪笥とか。
>kataさん
実用品かあ・・。
相方のよく使っているもの・・。
・・メガネ。
メガネのレンズに油性マジックで「好きだ」と入れるか・・。
投稿: そんちょ | 2004/11/19 12:41
ティファニーのオープンハートとか?
投稿: Akkey | 2004/11/20 04:02
え?
ティファニーってレストランじゃないんですか??
(おとぼけ)
投稿: そんちょ | 2004/11/20 10:06