携帯電話仁王立ち!
人は、何気ない日常生活の中の習慣から、恐るべき身体能力を無意識に発揮する事がある。
今日、私はそんな「日常の中の妙技」を目の当たりにした。
街場に用事のあった私は、世界一料金の高い仙台の地下鉄に乗った。
車内は非常に空いていて、皆、本を読んだり、音楽を聴いたり、瞑目したりして、それぞれの目的地までの時間をやり過ごしている。
ふと視線を向けた先に、一人の若い女性が立っていた。
通路の真ん中で仁王立ちになりながら右手に携帯電話を持ち、クチクチと何かの作業をしている。
左手は、ジャンパーのポケットに突っ込んだままである。
私は、
「このまま電車が動いたら、危ないのではないだろうか・・」
という心配をしてしまい、その女性の動向を観察する事にした。
プルルルルルル・・
発車のブザーが鳴る。
(ああ、ホラ、何かにつかまらないと!)
女性は仁王立ちのままだ。
「パシュウウウ・・!ミーー!」
と扉が閉まった。
仁王立ちは相変わらず携帯の構えを崩さない。
ゴクン!
という軽い衝撃とともに電車は動き始めた。
私の体にも横方向に慣性が働き、手すりにつかまってなんとかそれを凌ぐ。
仁王立ちは、慌てて何かにつかまるか、もしかすると転んでしまうのではないか・・。
私は心配と、やや悪趣味な期待をない交ぜにしながら仁王立ちを見た。
しかし、その二つは見事に裏切られた。
仁王は、何にもつかまる事無く、相変わらず右手で携帯を操り、左手はポケットに突っ込んだまま、絶妙な体重移動だけでやり過ごしていたのである。
(・・出来る!)
仁王はそれからも私の期待を嘲笑うかのように、突然来るブレーキも、緩やかなカーブでの縦の慣性にも柔軟に対応し、ひたすら携帯電話に没頭し、まるでよろける気配も見せなかった。
かえって、それをただ観察していた私の方が、慣れない地下鉄によろけ、酔い、のた打ち回っていた。
私は敗北を認めざるを得なかった。
おそらく、仁王は何千回と地下鉄に乗り、ほぼ毎回、携帯電話をいじり倒してきたのだろう。
無意識下の修行の中、車内で転んだ事や、細かい字を目で追っていて酔った事もあったのではないか。
そういった血の滲むような修練ののちに、携帯電話を弄くりながら地下鉄の繰り出す「G」に、柔軟かつ的確に対応するという術を体得したに違いないのだ。
私は、そういった鍛錬の結晶を目の当たりにし、感動を禁じえなかった。
惜しむらくは、その技はあまりに地味で、傍からの見た目がよろしくなく、おまけに車内での携帯マナーに著しく反しているということだろう。
ともあれ、仁王、恐るべし・・と思った事は言うまでもない。
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コメント
こんばんは.すごい分かります!絶対姿勢が崩れない.
結構若い女性でそういう人をよく見かけます(…).
しかし仁王仁王って(^^;
投稿: ko-hi | 2004/11/17 00:16
仁王もさることながら、世界一料金の高い地下鉄って…
なんぼするんでしょ?
投稿: ゆう | 2004/11/17 00:38
( ̄∇ ̄; !!アタシかも?(爆)嘘です、首都圏でやってますから。(笑)
私は電車進行方向に向かって、斜め45度に構えます。
そうすると、縦方向横方向の揺れに強いです。(^-^;
これは、ボクシングの時の構えと一緒です♪
テキが前から来ても、横から来ても、倒れない。( ̄ー ̄)♪
リンクありがとうございます♪(*^-^*)
投稿: cira | 2004/11/17 02:46
私は絶対に倒れるの…だから乗ったらドア付近から離れない!後ろから乗ってくる人が「おくに行けよ~」みたいな顔しても無視です。だって倒れたら将棋倒しみたいになるじゃないですかぁ~(oTωT)o
投稿: さくら | 2004/11/17 12:24
いらっしゃいますねっ!こーゆー人!
腰に手を当ててたりもしますね。
私は“電車の中で化粧バージョン”に遭遇したことがあります。
彼女は座っていましたが、
激しく揺れる市電内で、目の際に綿棒を当ててました。
揺れるたびに
「あ゛~目に入る!」と心の中で絶叫していた私は
降りる頃にはヘロヘロでした。
ある意味、神業とも言えますね。
投稿: Kei | 2004/11/17 15:49
>ko-hiさん
ねえ!
スゴイッスよね!
恐らく、敵(?)に襲いかかられても、無敵ですよ。
携帯を持っている間の彼女らは、「仁王」なのですから。
>ゆうさん
エート、大体10分くらいの区間で片道300円くらいです。
>ciraさん
っつーことは、やはり携帯をいじっている間はciraさんも「仁王」と化しているってことですね。
「常在戦場」みたいな。
>さくらさん
分かりますよ。
私もあの揺れはニガテです。
しがみつくものが無ければ、とても地下鉄には乗れません。
かつて一度車内で転んだ事もあります。(恥)
> Keiさん
怖いですねえ・・。
まあ、人にいちいち内心干渉する方に問題があるのかも知れませんが、楽しいものは仕方が無いッスよね。(笑)
投稿: そんちょ | 2004/11/19 12:31