「女性圏」で遭難す。
日常の中で、「女性圏」というものが存在する。
男性が入れない事はないのだが、なんとなく入りづらく、入れば入ったで所在が見つけられず、疎外感を禁じ得ず、背徳的な行為に及んでいるような感覚に陥り、「なんか、許されない雰囲気」のする空間である。
日頃男性は、この「女性圏」に対して為す術なく、無関心を装いながら遠巻きに眺めるしか出来ずにいるのだ。
つい先日の事。
私は、ふとした事から「女性圏」に立ち入る機会に恵まれた。
それは、相方(彼女)とユニ●ロへ行った時のことだった。
店内はそれなりに人もいて、有線放送に買い物客のざわめきが溶け、少し暑めの空調に乗って、新品の洋服独特の匂いが漂っていた。
相方は、今年の冬に着るフリース類を見ながら、その他の品物もチェックするべく女性服売り場の中へと入ってゆく。
私は少し迷ったが、フラフラと相方の後をついていった。
そう。
相方のそばで「いかにも彼女の買い物に付き合ってます風」を装う事で、「女性圏」への通行手形と、滞在ビザを得たのである。
淡々と品物をチェックする相方と離れぬように注意しつつ、ニコニコしながらついて回る私。
未知の洞窟を踏破してゆくような興奮がそこにはあった。
たまに女性客の視線を感じた事もあったが、
「彼女の買い物に付き合ってます」
というお墨付きが、その視線をやわらげてくれた(気がする)。
私は、相方の影に隠れるように、「女性圏散策」を楽しんでいた。
その時だった。
ふと転じた視線の先に、「インナー(下着)コーナー」を見つけてしまったのだ。
女性の下着コーナーといえば、数ある「女性圏」の中でも、特に侵入の許されない「女性圏のなかの女性圏」。
たまに、デパートなどで何かの拍子に誤って迷い込んでしまうと、目のやり場に困り果て、ついにはうつむいたまま無条件降伏を強いられるという、言わば、「究極の女性圏」であった。
まるで、未知の洞窟をさまよい歩くうちに、深奥に行き着き、思わぬ宝玉を見つけ出したかのような感動がそこにあった。
私は、「女性圏探索」の一つの終着点を見たような感慨を受け、拱手しつつマネキンに着せられたショーツとブラのセットを眺めながら、やや涙目になり、
「そうかそうか、オレもとうとうここまで辿り着いたのだな・・。」
と、万感を噛み締めていた。
しかしその時、全身に刺さる視線を感じた。
しみじみとインナーコーナーを眺める私に、周囲の女性から凍てつくほどの冷たい視線が送られていたのである。
私は動じなかった。
はっはっは。
いや、ですから~。
私は彼女の買い物に、「仕方なく」付き合っているだけでして、ね?
それで、何気なく見ているだけなんですってば。
ほら、隣にいるでしょ?
ウチの相方・・
・・って、
ついさっきまで、そこにいたはずの相方の姿はそこにはなく、感慨を噛み締めている間に私は一人取り残され、女性客の中でニヤニヤしながら下着のマネキンを眺める変態ちゃんになっていたのである。
今まで、「相方」の庇護のもと、「女性圏」の中で危うくも保障されていた私の安全地帯は消えうせ、「女性圏」の中枢部分で孤立し、疎外感と嫌悪感と羞恥心と困惑と不快の渦の真っ只中に立ち尽くしていたのだった。
(きゃ~~~~~~!!)
心の中で絹を裂くような悲鳴を上げ、私は小走りにその場を立ち去った。
赤面しながら小走りに「女性圏」の真っ只中を頼りなく、所在無くさまよい、やっとの事でフリースコーナーにいた相方を見つけ、すがりついたのだった。
「女性圏」の冒険は、常に危険と隣り合わせだという事を思い知ったのは言うまでも無い。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
初めてお邪魔します、303Eと言う者です。
何時も楽しく拝見させて頂いています。
【女性圏】……確かに男性は近寄り難いですね。
店舗にも寄りますがユニクロは視点を上に向けていないと何処からが男性のコーナーで
何処からが女性のコーナーなのかを見落としてしまいます(苦笑)。
が、しかし。
縋り付かれた相方様の反応と、そんな相方様の二の腕に手を伸ばしているそんちょさんのお姿に『グッジョブ』。
駄文失礼しました。
投稿: 303E | 2004/11/07 23:01
クククッ・・・ではありますが、
ユニ●ロでは、「女性圏」にもおのずと限界があり、
そこで遭難死ではそんちょさまがもったいない!
次回は更なる麗しの女性圏突入を期待したいnemu。
投稿: nemu | 2004/11/08 00:06
私の地元に本社があるユニ●ロですか。
次回は専門圏(店)にて
相方様をご案内差し上げては?
もちろん下見も入念に!?
投稿: はぁちゃん | 2004/11/08 00:43
>303Eさん
303Eさんはじめまして~。
管理人、そんちょです。
どうぞよろしくお願いします。
>店舗にも寄りますがユニクロは視点を上に向けていないと何処からが男性のコーナーで何処からが女性のコーナーなのかを見落としてしまいます(苦笑)。
これはありますね。
あ、これいいなあ~。
とおもってよく見ると、女物だったということもたまにあります。
>nemuさん
ふっふっふ。
これはまだ「女性圏」の入り口ですから、また「女性圏」を冒険する機会に恵まれたら、その時は報告しますぜ。
最終目標は、女子トイレです。
(ソリャ犯罪だって。)
>はぁちゃんさん
いいッスね~。
専門圏探訪しますか。
下見は敢えてせずに、一期一会で。(?)
投稿: そんちょ | 2004/11/08 08:32
>「究極の女性圏」
また1つ、自分に語彙が増えました。:-)
このエントリを読んで思い出したのが、私が急遽入院することになった時、主人が女性下着を買いに行く羽目になった話です。(切迫流産だった為その時穿いていた下着のデザインを変えるように看護士から指示があったのです)
デパートの下着コーナーでも、"おんなおんなした売り場"ではなく、ベージュの肌着が並んでいる売り場(グンゼとかね)で、店員さんに事情を話して選んでもらい、買ってきたという。:-)
でも、それよりも恥ずかしかったのが、主人は家の洗濯機を1度も使ったことがなかったので、私の着たパジャマをクリーニングに出してたことです。
見舞いの際、持って来てくれたプレスの効いたパジャマに心底驚きました。(^^ゞ
投稿: fumi_o | 2004/11/08 08:55
そういえば、女性が男性下着売り場に行ってもOKなせ界ですよね。
「私はダンナ(カレ)の下着を買いにきたのよっ、ええ、
もうネギと一緒よっ、男性パンツ!」みたいな。
ところで…
私は男性下着売り場のパンツ用マネキンのモッコリをつい触ってしまいます…。
投稿: じゅじゅ | 2004/11/08 16:31
>fumi_oさん
いやあ、、女性モノの下着を男が買いに行くというのは、本当に恥かしいと思いますよ。
私だったら、やはり店員さんに事情を説明して選んでもらい、その上で「試着してみてもいいですか?」と尋ねます。
まあ、ウソですがね。
>じゅじゅさん
そうそう。
相方なんかは、私と一緒に男性モノ下着コーナーに行くと、「なんか、微笑ましいカップルみたいでいいねえ。」と言ってくれます。
まあ、さすがにパンツ用マネキンのモッコリを触ったりはしませんがね。
わたしも、女性用下着マネキンの胸の部分を優しく包んでみたいものです。
まあ、ウソですがね。
投稿: そんちょ | 2004/11/08 21:22
さすが変隊隊長、やることが違いますな。
私なんか足元にも及びませんよ。
ちなみにウチの近所の店は通路の両サイドに
女性物の下着という挑戦的な一面を持っています。
「度胸の無い人は通行できません」みたいな。
女性用トイレ…お腹の事情や男性用トイレの都合
により2回程入ったことはありますが、
別になんてことはありませんでしたよ?
投稿: ゆう | 2004/11/09 00:46
下着売り場で彼女のブラ探した事はありますが・・・なんとも無かった私は変でしょうか?
投稿: 用水路 | 2004/11/09 02:27
>ゆうさん
はっはっは。
「変隊」って、かなりギリギリのネーミングですね。
「そんちょ」をやめて「へんたいちょ」にしますか。
>女性用トイレ…お腹の事情や男性用トイレの都合
により2回程入ったことはありますが、
別になんてことはありませんでしたよ?
おお。
つまり、常習であり、生活の一部というわけですな。
・・ちがう?
そうですね。
>用水路さん
変です。(キッパリ)
あと、どうしてHNがいきなし「用水路」なのかが気になります。
投稿: そんちょ | 2004/11/09 06:49
アパレルなんかの商社が主催するバーゲンが危険ですよ。なんたって男性ものを置いてある隣に、パンストや下着だけでなく、日用品コーナーがあって、衛生用品もありますから。
一番初めは無意識に近寄り過ぎて見事に凍りつきました。奇跡的に生還できたので、次回からはよく周辺の様子に気を配れるようになりました。
投稿: しながわ | 2004/11/09 13:03
よくぞご無事で・・。
そういえば、スーパーやDIYでも、目当てのものを探しているうちにそういうコーナーに迷い込んでしまう事がありますね。
アレは結構慌てます。
投稿: そんちょ | 2004/11/09 21:40
>そんちょ殿
HNは、なんとなくです。
タンポンもナプキンもビデも怖くありません。平気で買えます。
投稿: 用水路 | 2004/11/12 14:59