さよなら携帯
今日、携帯電話と別れた。
もともと、電波が届かないところに住むぼくと、電波の通じないところでは本領を発揮できない彼女(携帯)とでは、意思の疎通が円滑にゆくはずもなく、お互いに違和感を感じながらも週に数度、私が外に出た時にだけ逢うような関係であった。
ぼくは、彼女(携帯)の存在に疑問を抱き続け、彼女(携帯)もきっと、毎日の起床時間を知らせる事と、たまに計算機機能を使われるだけの、本来持つ優れた通信機能をあまり求められない暮らしに不安を募らせていったのだと思う。
そんな毎日が、少しずつぼくらの距離を、電波の通、不通よりもっと根本的な部分で離れ離れにしていったのだ。
しかし、心の距離は二度と立ち帰れない距離にありながらも、ぼくらの関係は続いた。
ぼくは、たまに彼女(携帯)の通信機能だけを利用したし、彼女(携帯)は、自ら別れを切り出すことも出来ずに、進む事も戻る事も出来ず、ただ求められるまま通信機能を許した。
砂を噛むような関係でも、ぼくらはほんの少しの部分でお互いを必要としあっていた。
その事実に一縷の望みを託したのだ。
そんなかすかな愛情の残光にすがるぼくらを嘲笑うかのように、運命はふたりを引き裂いた。
突然の事故が彼女(携帯)を襲い、二度とは帰れぬ場所へ連れ去ったのである。
呆然と立ち尽くしたぼくは、喪失感よりも、絶望感よりも、安堵感を抱いている自分に気付いた。
その時、はっきりと「ぼくに、人を愛する(携帯を持つ)資格など無い」という事を思い知らされたのだった。
今日、彼女が生まれた場所(ドコモショップ)へ行き、永遠の別れを告げた(解約した)。
ぼくたちが、お互いを必要とした「少しだけ」さえ置き去りにして。
グッバイ携帯電話。
こんにちは公衆電話。
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コメント
今時な彼女(携帯電話)と別離し、
今では稀な大和撫子な彼女(公衆電話)との
恋が再燃するワケですな。
投稿: はぁちゃん | 2004/11/02 00:49
ちょっとレトロな彼女(=アマチュア無線)はどうでしょうか?
ええ、彼女を落とすにはちょっとした試練(=免許取得)がありますけれど。
投稿: はに~ | 2004/11/02 11:00
あのさー、こういう文章って注釈がない方がいいなぁ。そりゃ、誤解する人もいるさ。でも少し前を読めば解って貰えるって。
しかしまー 単なる希望的意見であって、クレームでも要望でもありません(って、やっぱり注釈を入れてる (^_^;)
投稿: 涼 | 2004/11/02 18:40
すみまっせ~ん、思い切り誤解したっていうか、
最初は…(◎_◎) でした!
でも、ワイドショーより面白かった(^^)/です。
投稿: nemu | 2004/11/02 20:31
vodafone子ちゃんとかau子ちゃんでも 駄目かなぁ?
投稿: ゆかりぃ | 2004/11/02 22:01