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栄枯盛衰の味

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いつからか、頭の中にいついてどうしようもない存在に気付く。

想うだけで脳から汁が噴出し、顔は紅潮し目は充血し鼻からは荒い吐息が漏れ、心臓は早鐘のように脈打ち不整脈さえ併発し、四肢からは血の気が失われ、爪には白い斑点が浮き、大腸の働きは活発になり、あらゆる意味でいてもたってもいられなくなる。

そう、その症状は、私の心の中に入り込んできた難病。
「恋」である。

約12年ぶりの再会を果たしたときには、懐かしさに紛れて感じなかった感情が、2度目の縁を境に、急激な感情の変化を遂げ、恋慕の念へと昇華してしまった。

しかも、この恋は、相方(彼女)を巻き込んで、三角関係の様相を呈してきてしまっているのだ。
事態はますます混迷の度合いを深めている。

ぼくは両方好き。
相方も、恐らく両方好き。
向こうは、名前からして多分好いてくれているはずだ。
三者が三者とも「好き」のトライアングルを形成してしまっているのである。
相思相愛。
三者の、誰が欠けても成り立たない奇跡の関係。

それが、ぼくと、彼女と、お好み焼きの関係である。
 
 
 
お好み焼きが好きだ。
という事に、つい昨日気付いてしまった。
お好み焼きは、うま楽しい。
どちらかというと、「美味い」より「楽しい」が勝つ。
注文から、具が運ばれてくるまでが異様に早いのもイイ。
(そりゃあ、具を詰めるだけですからね。)
かき混ぜるのくらい店側でやってくれるのかと思いきや、それさえ客にやらせてしまおうというショーマンスピリッツに、「こんにゃろうめ。」と思いつつ、顔がほころんでしまう。
ニクい演出である。
油を敷くのさえ、人任せ。
焼くのもひっくり返すのも飛び散った具をまたかき集めるのもヘラでちょっとだけ端っこを持ち上げて焼け具合を見てベストなタイミングを計るのも裏面を焼く時にヘラで上から押さえつけるかどうかの判断もソースを塗るのもカツオブシを乗せるのも青海苔をかけるのもマヨネーズをかけるのもその分量さえ人任せである。

店員さんは、注文を取るのと、具や飲み物を運ぶのと、ガスをつけるのと、伝票を置くのと、会計くらいしか仕事が無いのではないか。
(こーやって書いてみっと、ウェイターとしては普通の仕事か。)
果たして厨房ではどういう作業が、どれくらいの人数で行われているのだろうか?
生の、または冷凍の具材を、注文に応じて鉢に入れるだけなのだろうか?

なにしろ、調理はほとんどが客任せである。
客は、調理半分(といっても焼くだけだが)、食べるの半分で、文句も言わずに楽しんでいる。
こんなにもぶっきらぼうな料理屋があるだろうか?

ぶっきらぼうと分かっていながら、それを許し、それどころかそれがイイという事になってしまう。
これはもはや「魔性」といっても過言ではない。

その「魔性」は、ヘラにもよく表れている。
ヘラは、ほとんどの場合、一つのテーブルに2本である。
二人以上の場合、一人一本。
要するに、一テーブルに2本と決められているらしい。
すると、焼き進めるうちにヘラが2本必要となる場面を通過することになって、
「ちょっとヘラ貸して」
となるのである。

ヘラを借りて、他の人間が見つめる中、「ひっくり返す」ことになる。
周囲の人間は、固唾を飲んで見つめざるを得ない。
喜悲こもごもの人間模様が展開される。
そこがまた計算し尽くされている感がある。
これがもし、ヘラの本数が4本とか6本だったとしたらどうだろう?
それぞれが、それぞれのお好み焼きに集中してしまい、気まずい沈黙が流れ、場は白けきり、子供はいたたまれずに泣き出し、女房は子供を叱りつつダンナをなじり、ダンナは酒に溺れ、仕事をなくし、ついには一家離散の憂き目を見るということもありえないとは言えない。
(多分、ありえない。)
一見不足とも言えるヘラ2本が、交流を生み、山場を生み、愛を育み、お父さんの威厳を生み、家族の笑顔を生んでいるのである。
そういうことに気付いてしまうと、隣の家族連れなどに
「その一家団欒は、ヘラのおかげだかんな。」
と教えてやりたくなってしまう。
言わないけど。

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目の前の鉄板に、大体二つ出来る丸い領土は、
「オレのものだかんな(by東海林さだお先生)」
感が滲み出てしまう。

お好み焼きは、国づくりである。
己の腕と、一本の、時には2本のヘラで作り上げる国家なのだ。
鉄板の上に落とされた領民は、国ごとにさまざまな文化を創造し、彩らせ、熱気は風土を芳香に変えて、鼻腔をくすぐる。
生まれたての生地の中は、香り立つほどの民族の特性が花開き、活気に満ち溢れるのである。
しかし、その栄華は短く、やがてかげりを迎えることになる。
ソースや、カツオブシや、アオノリや、マヨネーズなどの、いわゆる「特権階級」が、強力な権力を背景にのしかかってくるのである。
あわれ、具材という名の民族文化は、ソースやマヨネーズなどの強烈な風味に取り込まれ、否応なく「搾取される側」に立たされることになるのだ。

そして、国家の生命は、まさに終焉を迎えることとなる。
強権を行使しつづけるソース族に対抗すべく、生地族は国家領土をおよそ八つに分けての徹底抗戦、内紛が勃発するのである。
全面戦争となれば旗色の悪い生地族も、八分割された局地戦ではゲリラ的な戦法でソース族を翻弄し、各地では凄惨かつ酸鼻極まる闘争が繰り広げられた。
生地族の起死回生の一計は功を奏し、戦力は均衡してこう着状態となり、やがて生地族とソース族は戦いの無意味さを悟り、互いを尊重し、共生する道を模索し始めるのである。
しかしその時、突然の悲劇が国家を襲う。
内紛を傍観していた近隣の強国が、
「お、食べごろだナ。」
という宣戦布告とともに侵攻を開始。
生地族の「八分割の計」が裏目に出てしまい、哀れ、お好み焼き公国は分割され、連絡もままならず各個撃破の対象となり、あえなく併呑されてしまうのである。

国家は消滅し、後にはそこに国があったということの証明がわずかに鉄板に残り、凄惨な戦の痕跡が小皿に残るのみなのであった・・。

お好み焼きには、こんなにも壮大な物語があるという事をお気付きだろうか。
気付かずとも、お好み焼きを食べ終わったあとに、独特の寂寥を感じた方は多いはずである。
それこそが、栄枯盛衰、盛者必衰の理こそが、お好み焼きの最大の持ち味なのだ。
 
 
 
余談ではあるが、一人で食べるお好み焼きは、実にさみしいそうだ。(相方談)

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コメント

私もお好み焼きを焼くのは大好きです。

以前、友人とお好み焼きを食していたところ、向かいに座ったカップルは…プロでした…!!
二人は、彼がもんじゃ、彼女がお好み焼きを担当して、へらを譲り譲られそれぞれを作成していました。
手際よく、具を投入し、作り上げていく光景は、思わず見とれてしまうほどでした。
先にできたもんじゃを二人で食しつつ、「そろそろできたかな?」と、彼がお好み焼きに手を掛けようとしたその瞬間、彼女のへらが「手を出すな!!」とばかりに、彼のそれを、パシッと制しました。

ブラボー!!と友人と二人、彼女に拍手を送りたい気分でした。
二人でつくって食べるのが、よいですよね、相方さんと。

投稿: jeepway | 2004/10/30 20:46

3枚目のイラストがそんちょさん&相方さんじゃない・・・

みんなバカップル扱いするからきっとイラスト変えちゃたのね。
でも大丈夫です。ちゃんとそんちょさん&相方さんに脳内変換しておきますから!

投稿: はせ | 2004/10/31 00:10

 息子:「ぱぱ、おいち?」
 オレ:「おいち~ねぇ~」
 相方:「焦がさないでよ!」
 オレ:「あぃ。」

お好み焼き…
たまには
一人でもイイじゃねぇか…フッ

投稿: はぁちゃん | 2004/10/31 03:58

一人お好み焼き、近々実行したいと思っています。
焼酎片手に、のんびりとカウンターでお好み焼き…
うちがよく行く店がもっと近かったら、毎週やっていたことでしょう。

こらっ!誰だ!オヤジくさいとか言うのは!

投稿: たい | 2004/10/31 22:15

>jeepwayさん
あ!fanshenさんトコのjeepwayさんじゃないッスか!
どーもどーも。

そのカップル・・というか、彼女最高ですね。
最高の味を楽しんでもらいたいという愛情がありありと窺えます。
まあ、程度にもよりますが・・。(笑)

>はせさん
脳内変換しないで、そのままお楽しみください!
(せっかくノロケイラスト我慢したんですから。)

>はぁちゃんさん
兄ィ・・。
メチャメチャマイホームパパじゃないッスか・・。

>たいさん
うわ!オヤジくさ!
あ・・。

にげろー!!
タシタシタシタシ・・。
(腕の振りで引っ張りながら逃走)

投稿: そんちょ | 2004/10/31 23:15

1日(1時間)に1ヶ月分のブログを見るのは
結構目が辛い・・・脳は動けんのに。仕事も
あるから長くは見れないし、なにしろ目にダ
メージを与え過ぎると、翌日のコンタクトがじ
わっと熱いのなんのって。
寿さんしっかり私は見返してますよ。え、誰
ですかって?忘れたとは言わせませんよ!

お好み焼きは私の外食回数で首位です。相
方さんの言うとおりで、独りで食すのはもってのほか、孤独を感じてならないでしょうね。

このコメント寿さん気付いてくれるかなあ?

投稿: 脇役一発屋 | 2005/07/07 22:30

お好み焼きと言ったら、広島でしょう!
他所では 広島焼きとか言われているらしい
ですが、広島では当然お好み焼きといったら
ぐちゃぐちゃ混ぜ合わせたお好み焼きは 想像しません。

広島ではキャベツ肉そば卵がだしで溶いたタネにサンドされて層になったものが 
通常のお好み焼きです。

寿さん食べたことありますか?

ちなみにソースはおたふくソースでっす。

投稿: じゃこ | 2005/07/08 01:59

>脇役一発屋さん
気付いてますよ。

たまに返せないこともありますが、コメントは必ず読んでいます。

忘れてはいませんよ。

謙虚さと大胆さの奇跡の融合を果たしたHN。

バックナンバーまで読んでくださって、ありがとうございます。

「言戯」は一日3分!
寿との約束だ!(?)

お好み焼き、最近食べてないなあ…。

>じゃこさん
ないッスねえ~。

お好み焼きといえば、相方は以前、広島にも住んでいたことがあって、本場のお好み焼きの話をするんですよ。

美味そうだなあ~。

是非、食べてみたい。

いつの日か、広島まで行きます!
(つーか、高知に行きたい。)
そん時は、美味しい店を教えてくださいませ。

投稿: 管理人@寿 | 2005/07/08 10:24

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