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特盛りに負けた・・。

相方(彼女)と、とんかつ屋さんに行った時のこと。

お腹の空いていた私は、カツ丼を掻き込みたい衝動に(また衝動かい)駆られ、カツ丼を注文する事を決意した。
メニューを開いて、カツ丼のコーナーを見ていると、そこの店には「特盛り」という、カツ丼の一つ上のボリュームを誇る品目が燦然と輝いていたのである。

夕餉の時間だと言うのに、その日はまだ一度しかご飯を食べていなかった私はとにかく空腹だった。
カツ丼一杯ごときでは、私のお腹はとうてい満たされないに決まっていると、迷わずウェイターのオジサンを呼び、こう告げた。

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私の普段の少食っぷりを知っている相方は、感動しつつも心配顔であった。
しかし、私も男の(かなり)端くれである。
たまにはガッシガッシと雄雄しくカツ丼を掻き込む様を相方の目に焼き付けておかねばならない。

いつもの、「吹けば飛ぶような将棋の駒」という印象を払拭するチャンスなのである。
(いや、自分で思っているだけで、言われた事は無いのだが。)

つまり、これは戦いなのである。
 
 
 
「特盛り」という言葉は、普段の私にはまったくもって無縁のものである。
「腹八分目」を愛し、「満腹」を嫌う私としては、「普通盛り」が朋友であり、心の相棒なのである。
しかし、空腹時の発注しかも、かつての大好物であり、最近ではあまり食べる事のなくなったカツ丼に対する懐古の念も手伝って、数年ぶりに頼んだ「特盛り」に、胸は弾み、不安と期待がない交ぜとなって、冷たいお茶を持つ手は人知れず震えていた。

 
 
待つこと10分。
果たして「特盛り」は、その姿を現した。
見た目はどうも普通どおりのカツ丼であり、ドンブリの大きさも普通よりやや大きいか?
というくらいであった。

私は勝利を予感した。
空になったドンブリを高々と掲げ、相方の賞賛を受ける様を夢想した。
ふつうの「トシさん」から、「雄雄しいトシさん」に名前を変更する確信を得た。

静かに箸を取り、パキリと割って、戦闘を開始した。
勝つ予見は立っている。
後はそれを現実のものにする。
それだけである。

ガッシガッシ掻き込む。
ひたすらガッシガッシと掻き込む。
カツをちぎっては投げ、ちぎっては投げ、獰猛な肉食獣の如く、食べると言うより掘り進めてゆく。
相方は、その様を自分のカツカレーを黙々と食べながら見ている。

ガッシガッシ。
ガッシガッシ。

・・ガッシガッシ・・?

・・おかしい。

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かなり気迫を込めて掘削しているにもかかわらず、ご飯の分厚い壁は崩れる気配を見せない。
「はっ!」として、厨房を見る。
ウエイターのオジサンは「ニヤリ」と笑った(気がした)。

ご飯の壁が崩れる代わりに、私の勝算が崩れ落ちる音を聞いてしまった。
カツ丼に気を飲まれてしまったのである。
一回り大きいドンブリに、みっちり押し込められたご飯は、私の想像をはるかに越えて強壮で、その結束が固かった。

「特盛りチャレンジ」は、やはり無謀な試みだったのである。
 
 
 
戦いは、「負け」を意識したものが敗れる。
私に残された道は、「どれだけ損害を軽減するか」と言うことであった。

悲鳴を上げる胃をなだめながら、隙間を見つけてはカツとご飯を詰め込む作業を繰り返し、ようやくご飯残り3口分、カツ二切れのところで、額と鼻の下に汗を浮かべ、蒼白な顔色を浮かべる私を見かねた相方の

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という、言葉によるタオル投入があり、試合終了とあいなった。
「特盛り」の前に、私は敗れ去ったのである。

テンカウントすら聞けない、セコンドストップによる完敗であった。
 
 
 
やはり、己の分を超えた挑戦は、勝敗に関わらず良い結果は生まないという教訓を得た事は言うまでも無い。

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コメント

空腹時にガシガシ掻き込むと普段食べられる量より更に食べられなくなる気が…。
空腹の胃には優しく少しが基本ですよヽ(´∀`)ノ

投稿: Akkey | 2004/09/29 20:20

ああ・・やはりそうですよね。
いつもでしたらああいうことはしないのですが、何故かその時は気分が高揚していたのですね。

「魔が差した」とでも言うのでしょうか。
「優しく少し」でゆきます。

反省・・。

投稿: そんちょ | 2004/09/30 08:30

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