目と鼻と耳と
「目クソ鼻クソを笑う」
という言葉がある。
つまり、目クソと鼻クソは、大体同等であるということわざである。
しかし、本当に同等なのだとしたら、「鼻クソ、目クソを笑う」でもいいハズであり、殊更「目クソが鼻クソを笑っている」と描写するあたり、実は目クソと鼻クソの間には微妙な地位の格差があるという裏づけにもなるのである。
つまり、目クソの方が、鼻クソよりも若干ではあるが上位にランクインしているという事だ。
その格差は、どこで決定付けられるのか?
恐らくそれは、禁忌とされる順序であろう。
例えば人前で、目クソを取っていても、パッと見た人は「ああ、目にゴミでも入ったのかな?」くらいにしか思わないだろう。
しかし、鼻クソはどうだ。
鼻をほじっている時点で終わりである。
「まあ、この人、鼻クソをほじっているわ。なんてはしたない!」
と、一瞬にして「不潔者」、「不精者」、「ずぼら」、「恥知らず」、「痴漢」などのレッテルを体中、そこかしこに貼付されることとなるのだ。
さて、それでは同じ顔周りの老廃物である「耳クソ」はどうだろうか?
ご存知のとおり、「耳クソ」は、明らかに別格である。
目クソ、鼻クソのような、下賎な出自のものとは明らかに一線を画している。
高貴なオーラを発している。
目クソ、鼻クソが束になろうが、塊になろうが、到底耳クソには敵わないのである。
では、何故、耳クソはそんなにも身分が違うのだろうか?
まず、耳クソをほじる時。
その行動は、「耳掃除」と称される。
「鼻掃除」とか、「目掃除」とは言わない。
ここからして違う。
鼻はほじくるだけ、目は擦るだけである。
誕生の瞬間からして違うのである。
しかも、耳掃除には、綿棒、耳掻きなどの、「専用ツール」が必要となる。
マッチ棒などでは代用不可である。
鼻や目は、使ってもティッシュ一枚である。
器具からして違う。
そして、「耳掃除」は、厳かな儀式である。
ゆっくりと、慎重に、腫れ物に触るように、慈しみながら行われる。
全身は強張り、視線は中空を凝視したまま、表情は恐らく誰もが「一番真剣な顔」をしているはずだ。
その点、鼻はこうで、
目はこうだ。
何と言っても、耳掃除は他人にしてもらう事が許されることも、大きな違いである。
鼻クソや、目クソは他人に取ってもらうわけにはいかない。
そして、極めつけはもしも「大きい耳クソ」が取れたとき、それを高々と掲げ、他人にさえ自慢出来るということだろう。
大きい鼻クソや、目クソでは、自分一人でニヤリと出来ても、それを他人に見せることは出来ようハズもないのである。
このように、同じ顔周辺の老廃物と言えども、これだけの身分の格差があり、それは生まれる以前から決定しているという事なのである。
それは、人生にも似たところがあるのではないだろうか。
しかし、いくら身分や待遇に違いがあっても、必ず公平に訪れるものがある。
それは「死」である。
それまで歩んできた道は違えども、鼻クソは指で弾かれ、目クソはティッシュと共にゴミ箱へ捨てられる。
あれほど蝶よ花よ耳クソよともてはやされていた耳クソも、ものの数分でその価値を失い、やがて持て余した産みの親によって、指先から「ふっ」と吹き飛ばされ、死を迎える事になるのである。
「生」は平等ではなく、「死」は平等であるということも、人生に似ているのかも知れない。
願わくば、それぞれが己の生き様に悔いなく、天寿を全うしてくれればと願わずにはいられない今日この頃である。
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コメント
目くそ、鼻くそ、耳くそとダーティーな言葉を連発しておいて
最後は人間の「生」と「死」の話におちをつける・・・
流石です!勝手に師匠と呼ばせて下さい。
とても笑ってしまいました・・・
もうそんちょさんのブログ、見逃せません・・・
投稿: LYAN | 2004/08/25 02:00
確かに、前半は自分でも「これはちょっとなあ・・」と思うくらい、「クソ」の連発でした。
一体、どうなるのだろうと心臓がドキドキしていましたから。
しかも、書いていたのが夜中の1時過ぎ。
起きてからもう一度見ると、思わず「うふふふふ・・」と笑ってしまいますね。
アホだなあ~・・ぼく。
投稿: そんちょ | 2004/08/25 08:12
そんちょさん、こんばんは!
私も最近知ったそんちょさんのこのブログから目が離せない読者の一人です!今日も感心しながら、そして涙目になりさえしながら笑わせていただきました。私もひそかに"師匠"と呼ばせていただきます。ええ、呼ばせていただきますとも!(意味のないイバリッ。)
投稿: kanno | 2004/08/25 08:45
そんちょさん、こんにちは。
私も毎日数回、そんちょさんのblogを楽しみに拝見しています。もはや中毒状態です。
勝手ながら、リンクを張らせていただきました。これからも、ノロケネタ、人間観察ネタ、その他なんでも、更新を楽しみにしています!
投稿: なおこ | 2004/08/25 09:08
目クソも鼻クソも耳クソも幸せですね
こんなにそんちょさんに愛されて・・・
ここまで考えてくれてブログにまで書いてくれる人
なかなかいないワ☆
投稿: cyaco | 2004/08/25 13:34
初めて寄らせていただきました。
お、おもしろい・・(と、書いてしまっても失礼では
ないでしょうか)。
心地よく私のツボにはまってしまって、なんと言うか、
今日の仕事の疲れが取れたような・・私のお気に入り
のページになりました。
これからも楽しみにしています。
投稿: すず | 2004/08/25 14:38
>kanno さん
こんばんは!
「師匠」ですか!
わかりました!
では、私はkannoさんを「アップリケ様」と呼びます!
え?あだ名の話ではないので?
>なおこさん
お!こちらは中毒状態ですか!
私のblogに依存性があったとは驚きの色を隠せません!
リンクありがとうございました。
しかし、そんなにノロけネタはやってませんよ~?
あ、やってるわ・・。
>cyaco さん
まあ、そうですね。
私など、幼少のみぎりより「巻き■ソ(今さら伏字??)」を描き続けてきましたから、その辺への執着は凄まじいものがあるかも知れません。
>すずさん
どうも、はじめまして。
誤解の無いように書いておきますが、私は決してウケ狙いで書いてるわけではないのです。
本当は、バーで紫煙をくゆらせながら、バーボンを傾けるのが良く似合うダンディメンなのです。
本当です。
本当だってば。
投稿: そんちょ | 2004/08/25 20:13