「鋼の錬金術師」と聞くたびに・・
人間、なにがキッカケで、どこでどう注目を浴びるか分からないものである。
スーパーで、夕飯の買い物をしていた時の事。
携帯電話がブブブブと震えたので、とりあえず出てみた。
すると、身内からの電話で、
「悪いんだけどさー、本屋さんに寄って、『鋼の錬金術師』ってマンガ買ってきて!少年誌のコミックスで、確か、9巻だったと思う。」
と頼まれた。
「『ハガネノレンキンジュツシ』?9巻?・・・ああ、はいはい。分かった。」
夕飯の買い物を済ませ、そのスーパーの中にある本屋さんへ向かい、少年誌コミックスのコーナーへ向かった。
その時間帯は丁度夕飯の買い物でごった返す時間帯で、親と一緒にきたであろう小中学生で本屋も混みあっていた。
身内に頼まれた「鋼の錬金術師」という本を探していると、最近発売になったコミックスが平積みになっているコーナーにそれを見つけた。
その周りには、小中学生やら、いかにも少年漫画が好きそうなサラリーマンの兄ちゃんなどが群れを成していて、「はあ~人気のあるマンガなんだなあ・・」と感心しつつも、大変入りづらい雰囲気であった。
しかも、「鋼の錬金術師」というマンガは、ご丁寧に1巻から8巻まで並べてあったのだ。
「あい、ちょっとゴメンよ。」
と割り込み、「なに?このオッチャン。」という目にも負けずお目当ての9巻を探す。
9巻、9巻、9巻・・・。
はて、いくら探しても8巻までしかない。
んん??
8巻は、それなりに多く積んであるけど、さっき確かに9巻と言ってたよなあ??
もしかして、売り切れたのだろうか?
店員さんに聞こうかと思ったが、なんだか恥かしいので、身内に電話をすることにする。
一瞬、店の外でかけようかと思ったが、もう一度この輪の中に入るのが億劫で、周りにペースメーカーなどの医療器具を使っている人間がいそうもない事を確認して、携帯電話をかけた。
「あ、トシだけど。あのさあ。あの~・・」
ここで気付いたのだが、少年漫画の題名って、知らない人の前で声に出すのは非常に恥かしい。
「は、鋼の・・錬金術師って・・」
となるべく小声で言った瞬間。
という、異様な音とともに私に向かって一斉に注がれる視線。
「!!?」
うお!なんだ!?
なんか変なこと言ったか?
明らかに、「鋼の錬金術師」という言葉に反応して集まった視線である事は明白であり、平穏な木曜の夕方に突如として訪れた「衆人環視」という異変は、私をビビらせるに十分であった。
非常に居心地の悪い空気を感じながらも、なんとか8巻までしかない旨を伝え、永遠とも思える一瞬の沈黙の後に吐き出された
「ああ、ごめ~ん、8巻でいいんだ。」
という呑気な言葉にマジ切れしそうになったが、大人なのでグッとこらえ、8巻を押し抱くようにしてその視線を逃れる事に成功した。
一体、なぜ「鋼の錬金術師」という題名が、あれだけの人間の心の琴線を一斉に掻き鳴らしたのかは謎だが、ただひとつ言えるのは、これから「鋼の錬金術師」という題名を聞くたびに、あのあまりに痛い視線の集中を思い出すであろう事である。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
ハガレンですな。
確かに最近妙に人気を博してますね。
TVアニメにもなってるし。
確かにちょっと変わった雰囲気の作品ではあります。
私的にはケロロ軍曹が好きであります。
投稿: Akkey | 2004/07/23 22:34
「は、鋼の・・錬金術師って・・」って叫んだとき、
漢字が間違ってたのでは?
それとも、文法的に間違いがあったのでは?
その時そっと・・・第八巻を差し出しgood job
投稿: え? | 2004/07/23 23:52