漢(おとこ)のラマーズ呼吸法
大の男が泣くなんて、実に恥かしいことではあるが、さすがに涙を禁じえなかった事があった。
あれは、初めて足ツボマッサージを受けた時の事である。
数年前、一時期胃を壊してしまって体力が著しく落ち込んだ時期があり、それを知り合いのマッサージ師であるスギヤマさんに相談したところ、
「いいよー。内臓なら足ツボ。揉んであげるから。効くよー。」
と言われ、つい、ホイホイとうつ伏せに寝そべり足の裏を委ねてしまったのが不幸の始まりであった。
よくテレビなどで、タレントが足ツボマッサージで悶絶している映像を見ていた私は、すっかり「足ツボマッサージは痛いもの。」という先入観があり、不安で、ひどく緊張していた。
「痛くしないで、優しくしてね。」
と、何気なくエロチックにお願いし、軽くウケを取り足揉みは開始された。
ぎゅっぎゅ。
うー・・気持ちいいなあ・・。
ぎゅっぎゅ。
あー・・そこ効くわ。
なんだ、気持ちイイじゃないか。
てっきり痛いもんだと思っていたのに残念だ。
物足りんなあ。
などと余裕を見せていた。
それを知ってか知らずか、スギヤマさんはニコニコしてつぶやいた。
「はい、じゃあ、次は胃ね。」
・・・ッゴリゴリゴリ!!!!
一瞬。
焼き箸を押し付けられたかのような灼熱感が襲い、そこから脳みそまでを結ぶ線を傷みが推定秒速100mくらいの速さで駆け上がって、脳髄を焦がした。
「いっぎゃあああああああああああ~~~~!!!!!」
ごりごりごり。
悶絶。
脂汗と涙にまみれながら悶絶する。
「たた、タイムタイム!スギヤマさん、タイ・・・ムアアアア!!!」
ニコニコしながら、手は別の生き物のようにツボを責めたてながらスギヤマさんは言う。
「ダメダメ、ちゃんと揉んどかないと。」
激痛は一向に治まる気配を見せない。
一瞬、スギヤマさんを蹴飛ばして、この窮地を逃れようかとも考えたが、それはさすがに思いとどまった。
(スギヤマさんは、過去に一度蹴られた事があるらしい。)
ではどうしよう。
激痛にチカチカする脳みそで必死に役に立ちそうな情報を探す。
多分、脳みその「海馬」とか、その辺が使われたのではないだろうか。
そして思いついたのが、
であった。
そうだ!
激痛を和らげるにはラマーズ呼吸法が良いと聞いたことがある!!
そう思い至るや否や、生涯初めてのラマーズ呼吸法による痛耐を試みたのである。
ごりごりごり。
いきんで!いきんで!
ひっひっふー!
ゴリゴリゴリ。
そんちょさん!しっかり!
ひっひっふー!
ごりごりごりごりごりごり・・
効かねえ・・・!!!
結局、その後も失禁寸前まで責め立てられ、ボロ雑巾のようになりながら出た結論は、
ラマーズ呼吸法は、足ツボマッサージには効かない。
という、当たり前の真実であった。
余談ではあるが、
様々な痛みに対する手段としてのラマーズ呼吸法は、自分自身を検体としてデータを集めた所によると、
「タンスのカドに小指をぶつけた」
クラスの痛みまでならやや効果アリとの実験結果が報告されている。
恐らく、生涯ラマーズ法のお世話にはならぬであろう男性諸氏の参考になれば幸いである。
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コメント
足ツボ、そんなに効くのですか?
わたしも足ツボ処女なのでぇ、人の経験談しか聞いたことないんですぅ。
痛くしないでぇって泣いちゃうかもですぅ。
投稿: Akkey | 2004/07/21 22:51
足ツボは効きますよ~!
アレは、押す方もかなり体力を消耗するそうです。
機会がありましたら、是非どうぞ。
投稿: そんちょ | 2004/07/23 00:13