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店屋にて

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とあるファーストフードの店で食事していた時のこと。
右手側にどうにも気になる人がいた。

食事は終わっているのに席を立つ事も無く、ただただ黙々とクロスワードに取り組んでいる。
私が食事を始めた時からそれはもう始まっていて、約20分後食べ終わってもまだ続き、連れとちょっと話をして席を立った30分後までもまだまだ終わる雰囲気は無かった。

賑やかな店内で、その空間だけ時間が止まっているかのような、ある種の緊張感がみなぎっている。
むしろ、ファーストフード店でハンバーガーを食べているこっちが場違いなんじゃないかと思わせるほどの自然さがそこにあった。

果たしていつまで続くのだろうかと、観察していたかったが、用も無いのに店屋にいるのは心苦しいという、生来の貧乏性がそれを許さず、その店を後にしたのだが。


割と、喫茶店などでコーヒーを飲みながら本を読んだり、携帯をいじったりする人はよく見かけるけど、中には宿題をやっている学生さんとか、書類を広げるサラリーマン、突っ伏して軽く寝てみるお嬢さんなど、まるで自宅や職場にいるように振舞う人もいる。

決して悪いと言っているわけではなく、私は性分としてそれが出来ないので、ちょっと羨ましい。

だって、お茶とか食事が終わったら、自分がそこにいる意味が無くなるわけですから。
出される一杯のお茶なり、一膳の食事なりが、そこにいるための意義なのであり、それが無くなった時のなんともいえない「宙ぶらりん感」が、なんともいえない居心地の悪さを催させるわけなのです。

やがてそれは「罪悪感」にさえ姿を変えて、自身の精神を苛んでくるわけですよ。

「ああ・・早く出なきゃ。」と。
「長居してすみません。」と。
「いや、むしろ生まれてきてすみません。」と。


ウソですが。


まあ、多少寛ぐのは当然だし、食べてすぐ「行くぞ~」と言うのもなんなんですがね。
食べた後の「寛ぎタイム」というのは人それぞれ。
私はだいたい長くて10分くらいですが、それが異様に長い人もいるのですね。

面白いものです。

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