恐ろしい子・・!
「怖い物知らず」というものはいるものだ。
それは、ウチの母だけかと思ったが、案外他にもいた。
私の相方(彼女)である。
今、宮城県美術館に、「マルモッタン美術館展」というものが来ていて、私でも知っているクロード・モネとか、ドガとか、ルノワールとか、ベルト・モリゾとかのいわゆる「印象派」と呼ばれる著名な画家の絵があるというので、ちょっくら見に行ってみた。
丁度、街場に用事があって、是非見たいというので、相方と一緒に観に行く事にしたのだ。
さっそく会場に入り、絵を鑑賞する。
ほほー。
なるほど。
のっけから素晴らしいものばかり。
思わず、
「この人、上手いねえ。」
と、世界的に著名なドガの絵を評価する私。
「いや、世界的な画家だから。相手は。」
と、当然突っ込まれたりとか、
「この絵、ちょっとこのスペースが足らんよな。描き足してやろうか。丁度、今ボールペン持ってるし。」
「ああ、どうぞどうぞ。」
とか、コソコソと傍若無人なことを言いながら観て歩いた。
一点一点、ねぶるように観てゆく。
あそこが上手い、ここがドキリとする、
なるほど、こうやって絵を観るのは非常に楽しいものだ。
さすがに、世界的に貴重な絵ばかりなので、警備も厳重で、学芸員と思しきおねえさんも随所にいる。
ある絵の前で、また上記のようにコソコソと話していると、
相方が突然、
「ここがさ」
と、指をさした。
本人は勿論触るつもりなど無く、ただ「ここが・・」と指しただけだったのだが、結構その距離がギリギリだったので、私もちょっとドキッとしたし、近くにいた学芸員のおねえさんも驚いて、身構えたくらいだった。
相方は何事も無かったかのように次の作品に行ったので、
ああ、本人は気付いていないようだな。
と、思っていたのだが、
しばらく観ていって、今度は違う学芸員さんがいるところで
ふたたび
「ここがさー」
と言いながら
「!!」
思わず身を乗り出す学芸員さん。
しかし、ギリギリで触らず、
「触らない、触らない、大人だもん。」
と言い捨てながら、何事も無かったかのように次の作品に行ってしまった。
呆然と立ち尽くす学芸員さん。
以前、同じセリフをとあるパン屋さんの店先で、並べてあったメロンパンの前で
「メロンパンてさー、見ると押したくなるよねえ。」
「そうか?じゃあ、押しなよ。」
「押さない、押さない、大人だもん」
というやり取りが走馬灯のように思い出されて、もしかしたら、この人にとっては世界的名画も、メロンパンも同じなのではないかと、
と、戦慄が走った。
それから、しばらく我々に学芸員さんたちの熱い視線が注がれたのは言うまでも無い。
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