取材される。
それは、朝に突然告げられた。
「今日、ラジオが取材に来るよ。」
「・・・ああ、そう。」
なんでも、昨日の夕方くらいに「明日、ラジオカーでそちらにお邪魔してもよろしいでしょうか?」という旨の電話があったらしくて、それを承諾したらしいのだ。
前日の夕方というのが否応無い感じがして面白いと思った。
ちなみにそのラジオは、「東北放送(TBC)」という放送局から、主に仙台を中心に流されているAMの番組で、私も車や仕事中などによく聞いているからなじみは深かったりする。
題名は、「漢太のウキウキラジオ」という。
そんなこんなで、お昼チョイ過ぎ頃に、そのラジオカーはやってきた。
我が家は山々に囲まれているため、今時携帯電話の電波も通じない。
ある意味、今時貴重な立地にあるのだ。
だから、スタッフの人方は、ラジオカーから電波を送るのに随分と苦労しているようだった。
そんな様子を、家族全員ニヤニヤしながら眺めている。
「ふふ・・果たして送れるかしら?電波を。」
と言わんばかりの態度で見守っている。
しかし、程なくかろうじて電波を送れるポイントを見つけられてしまった。
家族全員、内心「チッ・・」という舌打ちをしたことは言うまでもない。
別に、ラジオのスタッフさんに恨みがあるわけではなく、ただ、トラブルが好きなだけなのだ。
そこだけは誤解しないでいただきたい。
生放送なので、事前にある程度のおおまかな段取りを説明される。
どうやらそれぞれのやっている仕事を自分で紹介していって、「家族全員職人一家」というテーマで行くらしい。
当然、私には
「次男のトシです。陶芸と石窯ピザやってます。」
というセリフが当てがわれたわけなんだけど、またここで要らんドス黒い欲望が頭をもたげてきた。
「次男の●●●です。●●●●、●●●で、●●●●!なんつって~!トロピロプ~~!」
ああ・・・!言いたい!放送禁止用語!!
取材にはまったく緊張しないくせに、そちらの想像から生まれるスリルが脳の中にドーパミンやらアドレナリンやらを噴出させ、体温が上がり、鼓動は早くなり、ついでに鼻息も荒くなってきてしまった。
まさに、このラジオの生殺与奪権は、我が手中にあると言っても過言ではない。
ドキドキドキ・・・。
イクか?
イッちゃうか・・?
そんな極めて危険な思想を持っている異分子がいるとも知らず、ラジオは生放送を始めた。
リポーターのかわのめえりこさんの第一声は、
「皆さん、同じ顔をしていますねえ~!」
(上図参照)
やはりそう来ましたか。
そう。
ウチは、兄弟全員母系の顔をしている。
歳を重ねるほどに顔が似てきて、なるほど良く似た塩基配列が施されているのだろうと容易に予想できるほどなのである。
良く似た表現に、
「判で押したような顔」
と言った人もいたが、それは別の話。
その「よく言われる事」から、生放送が始まったわけだが、ここでまた我が家特有の世界が発動する。
全員が「我こそは」と言わんばかりにウケを狙いにゆくのだ。
実は今まで何度かテレビやラジオの取材を受けているため、取材慣れしているというのもあるのだが、生来の無駄で不利益なサービス精神、いや、本能が、本日一番のウケを我が物にしようと骨肉の争いを引き起こさせるのである。
その結果。
今回は兄が一番のウケをかっさらっていってしまった。
家族全員、内心
「チイッ!奴に持っていかれたぜ!」
「何、マグレさ、運のいい奴!」
「アイツ、最近調子コイてるよな!」
と思っていたかどうかは定かではないが、まあ、とにかく無事に生放送は終わったわけなのだった。
しかし、いつも思うのは生放送で喋るアナウンサーって凄いなあ・・という事。
だって、今、自分が喋った事が何千、何万と言う人が聞くわけだから。
やり直しも聞かないし、大変なプレッシャーだろうなあ~と思う。
生放送というと、すぐに禁止用語を言いたくてムラムラするような私には到底無理な職業でしょうな。
あ、そう言えば禁止用語、言わなかったなあ。
千載一遇のチャンスだったのに。
なんつって。
言わない言わない。
大人だもん。
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